税制と社会保障

文献情報

文献番号
200500033A
報告書区分
総括
研究課題名
税制と社会保障
課題番号
H17-政策-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 謙治(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 本田 達郎(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 米山 正敏(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 尾澤 恵(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 漆原 克文(川崎医療福祉大学医療福祉学部)
  • 加藤 久和(明治大学政治経済学部)
  • 佐藤 雅代(北海道大学公共政策大学院)
  • 宮里 尚三(日本大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19年を目途に抜本的改革を行うことが与党平成16年度税制改正大綱で決定されたが、「平成17年度税制改正に関する答申」は「社会保障における税負担と社会保障負担の意義・役割や、そのどちらにより重く依存すべきかの検討が重要な政策課題」と指摘している。少子高齢化や右肩上がり経済の終焉など社会経済の変化の中で、税制改革は社会保障制度に大きな影響を与える要素であり、持続可能な社会保障制度を構築するためには、税制との関係と役割分担について検討する必要がある。本研究では、これらの課題に応えるために、租税の転嫁と帰着を視点とした実証分析や企業アンケート調査と制度分析とを連携して、多角的に分析を行うことを目的とする。
研究方法
1年目には、転嫁と帰着に関する文献研究、専門家からヒアリングを行い、とくに社会保障財源において消費税を利用すべきかどうか議論が進んでいることを考慮して、税の転嫁と帰着の実証分析と企業に対するアンケート調査を行う。また、制度分析では、社会保障の財源として社会保険料と税金のどちらが社会的公平の観点から望ましいかということについて、文献研究、消費税(付加価値税)税率が高いEU諸国の動向やOECDによる財政動向分析、児童扶養控除・家族手当・払戻型児童税額控除・非払戻型児童税額控除の諸制度を経験したカナダや税制による子育て支援をとるアメリカとの比較研究を行う。
結果と考察
価格の伸縮性・粘着性を考慮する場合でも、企業の市場支配力を考慮する場合でも、消費者物価指数全体で見ると価格転嫁(前転)が生じていることが認められた。価格転嫁が賃金に及ぼす影響、すなわち後転と帰着について先行研究の整理を行った結果、帰着が起きている事実が見いだされた。制度分析によれば、事業主負担の規範的性格について整理や類型化は可能であるが、その帰着・転嫁まで考えると、その影響は非常に複雑である。
結論
消費税の価格転嫁と帰着が生じる可能性は否定できない面があり、社会保障財源として消費税が重要な選択肢であるとしても、その引き上げ幅等については慎重な検討が必要である。事業主負担は、人を雇い利益を得ることに伴う社会的責任に基づき負担するものとして説明すべきである。社会保険料はドイツやフランスの社会保障制度で中心となる財源調達方法であり急速に変化することは考えにくいが、今後の社会保障費用の増加に対して、財源調達方式の追加等の修正は必要となると思われる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-30
更新日
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