医療費分析による保健医療の効率評価に関する実証研究

文献情報

文献番号
200500028A
報告書区分
総括
研究課題名
医療費分析による保健医療の効率評価に関する実証研究
課題番号
H16-政策-023
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療費が高騰するなか、疾病予防と健康増進の医療費節減効果が期待されている。本研究の目的は、予防を基調とする保健医療システムの構築に向けて、そのエビデンスを示すとともに、具体的なあり方を提言することである。
研究方法
1)大崎国保コホート研究にもとづく検討:宮城県大崎保健所管内に住む40歳から79歳の国民健康保険加入者全員約5万人を対象に、平成6年秋に生活習慣などのアンケート調査を行い、平成7年1月以降の医療利用状況を追跡している。喫煙・肥満・運動不足の組み合わせ別に医療費を比較した。
2)家庭血圧測定の費用対効果に関する検討:福島県西会津町のある地区の30歳以上全住民を対象に、1ヶ月間、家庭で血圧を自己測定する事業を実施して、その効果と費用対効果を評価した。
3)統合失調症医療費の地域格差とその要因に関する検討:宮城県内7町を対象に、平成14年5月診療分の統合失調症医療費と入院割合との関係を解析した。
4)医療制度改革のあり方に関する提言:財政主義的な医療費抑制策の限界、生活習慣が医療費に及ぼす影響について、予防を基調とする保健医療システムの構築に向けた提言、という章立てで構成される提言を取りまとめた。
5)倫理上の配慮:上記の研究全てが東北大学医学部倫理委員会で承認されている。
結果と考察
1)大崎国保コホート研究にもとづく検討:喫煙・肥満・運動不足のいずれも該当しない群に比べて、いずれか1つリスクがある群の医療費は6-9%増加、2つ該当する群では11-31%増加、すべて該当する群では44%も医療費が増加した。
2)家庭血圧測定の費用対効果に関する検討:家庭血圧測定を通じて高血圧者の治療コンプライアンスが改善する。本事業の費用対効果は優れていることが示唆された。
3)統合失調症医療費の地域格差とその要因に関する検討:統合失調症医療費の地域格差の最大の要因が入院医療であり、地域における入院割合を10%減少すれば同医療費の23%を削減できることが示唆された。
4)医療制度改革のあり方に関する提言:保険者による生活習慣病予防事業の実施、予防を促すインセンティブの導入、医療保険に対する予防給付の導入について具体策を提言した。
結論
予防は、医療費の節減と健康レベルの改善という2つの目標を同時に達成することのできる唯一の方法である。予防を基調とする保健医療システムの構築こそ、わが国の社会経済的活力を維持するうえで最も重要な課題であり、その達成が急務なのである。

公開日・更新日

公開日
2006-04-04
更新日
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