食事・栄養指導の実態と効果分析に関する研究

文献情報

文献番号
200500014A
報告書区分
総括
研究課題名
食事・栄養指導の実態と効果分析に関する研究
課題番号
H15-政策-027
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松田 朗(社団法人日本医業経営コンサルタント協会)
研究分担者(所属機関)
  • 森脇久隆(岐阜大学医学部・臓器病態学講座・消化器病態学分野)
  • 吉田勝美(聖マリアンナ医科大学・予防医学)
  • 小山秀夫(国立保健医療科学院)
  • 中村丁次(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科)
  • 川島由起子(聖マリアンナ医科大学病院栄養部)
  • 杉山みち子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病院における栄養食事指導体制の充実により、医療サービスの質の向上と効率化に大きく寄与することが国際的に認められている。この場合、入院早期における栄養状態のリスクの把握および栄養食事指導によるリスクの軽減が必須であるが、わが国ではその効果分析が体系的に行われてこなかった。そこで、本研究は医療保障制度における栄養食事指導の実態調査から現状の問題を明確化した上で、栄養食事指導の効果分析を行い、診療報酬における栄養食事指導の適正な評価について明らかにする。
研究方法
協力施設(2型糖尿病:5施設、低栄養状態:3施設)において平成16年4月1日から平成17年9月30日までに、新規入院、あるいは新規外来で栄養食事指導を受けた患者のうち、2型糖尿病については日本糖尿病学会の診断基準を満たす者、低栄養状態については、血清アルブミン値≦3.5g/dl、BMI<18.5のいずれかを満たしている者を抽出した。調査期間中に把握可能な対象者のアウトカム指標および関連情報を収集し、ベースラインから3か月後のアウトカムの変化および、アウトカムの改善に関連する要因を検討した。
結果と考察
2型糖尿病患者については、薬剤の変化を考慮しても開始時と比較して3か月目の血糖コントロールは改善していた。さらに、改善と関連する要因を検討したところ、個別指導を行うこと、3か月間に2回以上の栄養食事指導を行うことの重要性が示された。一方で、栄養状態の改善をモニタリングされている患者数が少ない実態が明らかになった。今後は、患者個別に設定した目標の達成状況を、退院後も継続的にモニタリングする体制を整備する必要がある。また、低栄養状態については、診療報酬上の対象外であることから、ほとんど栄養相談が行われていない現状が明らかになった。
結論
2型糖尿病の血糖コントロールにおける栄養食事指導の有効性および改善と関連する要因が明らかになった。低栄養状態については、ほとんど栄養相談が行われていない現状が明らかになった。今後は、平成18年4月から施行される栄養管理実施加算による入院時早期の低栄養状態の把握と共に、栄養食事指導へと継続する体制を充実する必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200500014B
報告書区分
総合
研究課題名
食事・栄養指導の実態と効果分析に関する研究
課題番号
H15-政策-027
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松田 朗(社団法人日本医業経営コンサルタント協会)
研究分担者(所属機関)
  • 森脇久隆(岐阜大学医学部・臓器病態学講座・消化器病態学分野)
  • 吉田勝美(聖マリアンナ医科大学・予防医学)
  • 小山秀夫(国立保健医療科学院)
  • 中村丁次(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科)
  • 川島由起子(聖マリアンナ医科大学病院栄養部)
  • 杉山みち子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病院における栄養食事指導体制の充実により、医療サービスの質の向上と効率化に大きく寄与することが国際的に認められている。この場合、入院早期の栄養リスク軽減が必須であるが、わが国ではその効果分析が体系的に行われてこなかった。そこで、本研究は医療保障制度における栄養食事指導の実態調査からその課題を明確化し、診療報酬における栄養食事指導の適正な評価について明らかにした。
研究方法
1)公的病院連合加盟357病院を対象として栄養食事指導に関する実態調査を行った。また、入院患者4,142名において、NCM活動による栄養改善に関する効果を分析した。
2)科学的根拠に基づいた栄養食事指導のあり方を検討し、プログラムおよび教材を作成した。また、NCMを推進している13病院において、作成した教材を用いた6か月間の継続的な栄養食事指導を実施し、その前後比較を行った。さらに、5病院で過去の栄養食事指導等の記録に基づいて、2型糖尿病あるいは低栄養状態の患者における、初回から3か月後のアウトカムの改善との関連要因を検討した。
結果と考察
①低栄養状態に対する栄養食事相談は、診療報酬の対象外であり、殆ど実施されていない現状が明らかになった。
②NCM体制の整備状況によって、平均在院日数、入院時栄養食事指導件数、低栄養状態に対する栄養食事相談件数が異なった。また、入院患者の生活習慣病に関連したBMI、収縮期血圧、HbA1c、中性脂肪等の栄養リスク指標の入退院時の差には、NCM体制の有無が関連し、その有用性が明らかになった。
③2型糖尿病患者の継続的な栄養食事指導やアウトカムのモニタリングは十分に行われていない現状が明らかになった。
④2型糖尿病は、薬剤の影響を除外しても、栄養食事指導によってHbA1c、空腹時血糖が有意に改善していた。また、血糖コントロールの改善と関連する要因は、個別指導を行うこと、3か月間に2回以上の栄養食事指導を実施することが挙げられた。
結論
栄養ケア・マネジメント体制の整備が、効果的な栄養食事指導を実施する上では重要であった。また、2型糖尿病患者の血糖コントロールの改善には、個別指導を行うこと、3か月間に2回以上栄養食事指導を行うことが関連していた。今後は、栄養管理実施加算と連携した個別の栄養食事指導に引き続いて、退院後も継続的な栄養食事指導およびモニタリングを行う体制を整える必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病院における栄養食事指導体制の充実により、医療サービスの質の向上と効率化に大きく寄与することが国際的に認められているが、わが国ではその効果分析が行われてこなかった。本研究は比較対照研究ではないものの、入院患者に対する栄養ケア・マネジメント体制の整備および栄養食事指導の有効性が、大規模な前後比較研究によって明らかにされたことの学術的、社会的な意義は大きい。また、低栄養状態に対する栄養食事相談がほとんど行われていない現状が明らかになり、現在の診療報酬上の課題を明確化した点も社会的に意義がある。
臨床的観点からの成果
2型糖尿病、低栄養状態における治療上の栄養食事指導の重要性は、国際的に科学的根拠が提示されているものの、わが国における研究では殆ど提示されていなかった。本研究によって入院患者の栄養リスク改善における栄養ケア・マネジメント体制の整備と、2型糖尿病の血糖コントロールにおける栄養食事指導の有効性が明らかになった。さらに、臨床的な効果を高めるためには、個別指導による継続的な栄養食事指導が重要であることが明らかになった。以上の成果は、栄養食事指導の診療報酬上の評価を見直す上で重要であると言える。
ガイドライン等の開発
国内外の先行研究から、科学的根拠に基づいた2型糖尿病および低栄養状態の入院?外来継続栄養食事指導プログラムおよび教材を作成した。また、13病院において、作成した教材を用いた6か月間の継続的な栄養食事指導の介入を行った。対照群と比較した場合の効果は対象者数が少なかったために明らかにできなかったが、介入前後を比較した結果、2型糖尿病における血糖コントロール、低栄養状態におけるアルブミンの改善が明らかになった。これらの成果は、今後の栄養食事指導のガイドライン作成に寄与できると考えられる。
その他行政的観点からの成果
平成18年度の診療報酬改定では、栄養管理実施加算が新設されたものの、栄養食事指導に関する見直しは行われなかった。これはわが国で栄養食事指導の効果が体系的に分析されてこなかったためと考えられる。本研究により、2型糖尿病および低栄養状態における栄養食事指導の有効性および関連要因を大規模調査によって検討できた意義は大きく、今後の診療報酬の改定に反映されることが期待される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
採択決定
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
杉森裕樹、吉田勝美、小山秀夫他
わが国の院内栄養管理サービス(NCM)に関する研究-公的病院連合加盟病院における実態調査-
病院管理 , 43 (2)  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-