文献情報
文献番号
200500007A
報告書区分
総括
研究課題名
ホームレス者の医療ニーズと医療保障システムのあり方に関する研究
課題番号
H15-政策-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 研二(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
- 逢坂 隆子(四天王寺国際仏教大学 大学院人文社会学研究科)
- 高鳥毛 敏雄(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 的場 梁次(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 福田 英輝(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 下内 昭(大阪市保健所 感染症対策室)
- 中山 徹(大阪府立大学 人間社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
7,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究はホームレス者を対象に、面接聴取、健康診査、死亡データの分析などを通じて、その健康実態を実証的かつ多角的に明らかにし、医療ニーズや保健医療サービスの評価の上にたって、有効かつ効率的な健康支援と医療保障のあり方の検討を行う。
研究方法
高齢者特別清掃事業従事者に対する健康診査、結核検診、自立支援センター入所者食事調査、大阪府監察医事務所等が扱ったホームレス死亡例調査。
結果と考察
1.健診受診者1446名を野宿群と簡宿群に区分し、健康状態を比較した。野宿群を簡宿群と比較すると、野宿群では不眠、ストレスなどの問題を訴える人の比率が高い、食事内容が貧困で低栄養状態の率が高い、歯の状態にも問題が多い、胸部レントゲン判定で要医療者の率が高い、重度高血圧の率が高いなどが明らかになった。両群の生活形態の差は主に収入によってもたらされていた。2.結核検診を3年間連続して実施した結果、野宿生活者の結核有所見者割合は約3割、要治療者は約2%であった。検診を連続して行うことにより過去の写真との比較判定ができ大量排菌状態になる前に患者を治療に結びつけられた。3.特別清掃事業従事者健診データを分析し、食事の噛み具合が不良になるにつれて、低栄養状態の頻度が増えること、食事の噛み具合は、現在歯の本数および咬合の状態に依存していること、噛み具合は適切な義歯を装着することによって改善されることを示した。4.自立支援センター入所者44名は、4割は入所前1ヶ月間食事に窮していた。1か月収入は1万円未満が約半数で、コンビニ等の残飯を利用する人が多かった。収入の少ない人ほど肉魚卵や果物野菜の摂取頻度が少なく、自分の食生活に問題があると認識し、改善を希望していた。5.2000年から5年間に大阪市で発生したホームレス者異状死は793名。栄養障害や栄養障害に基づく凍死が数多く存在しており、未治療の生活習慣病が大きく影響したと思われる循環器疾患死も依然として多かった。
結論
3年間の研究成果を総合し、ホームレス者への健康支援と医療保障のあり方について(1)ホームレス者の健康支援のあり方、(2)結核予防方策、(3)食の支援と生活習慣病予防、(4) 歯科保健対策の4つの側面から提言を述べた。いずれの側面についても、公衆衛生という行政施策の課題であると同時に、民間団体との協働、生活支援や自立支援を含む包括的支援の一環として取り組む必要性といった課題が指摘できる。
公開日・更新日
公開日
2006-07-03
更新日
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