少子化社会における妊娠・出産にかかわる政策提言に関する研究

文献情報

文献番号
200500001A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化社会における妊娠・出産にかかわる政策提言に関する研究
課題番号
H15-政策-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
福島 富士子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 小林秀資(長寿科学振興財団)
  • 岡本悦司(国立保健医療科学院 )
  • 柳澤秀明(埼玉県熊谷保健所)
  • 宮里和子(愛知医科大学看護学部)
  • 奥田博子(国立保健医療科学院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、「よい妊娠、出産、産褥、子育て」を経験すれば、その次の子どもを産む動機となるとの仮説を持ち、現場での調査をもとに、実態に即した政策提言をすることを目的としている。
研究方法
平成17年度は、以下の研究を行った。
1)わが国の市町村別、5ヵ年別の合計特殊出生率のデータセットを作成し、特徴を観察し、市町村別のばらつきを規定する因子を抽出した。
2)合計特殊出生率が最も高い沖縄県多良間村の多産要因について、宮古地域の保健師への面接調査を通して検討した。
3)次世代の妊娠出産へのアプローチとしての思春期の子どもたちの親に対するワークショップを開催した。
4)妊娠・出産・育児において、相互関係性をどう捉え直すことができるのかについて考察した。5)3年間の結果の集大成として、少子化における妊娠・出産・子育てや地域づくりに関するシンポジウムを実施した。
結果と考察
1)市町村別の合計特殊出生率を規定する要因として、離島であること、九州・沖縄地方であること、町村であること、が抽出された。自治体のホームページを検索し、一部の自治体で子育て支援策が豊富であり、公表されていること、市立助産所をもっていることなどの条件が多産要因として抽出された。
2)多良間村の多産の要因として ①子育て支援が充実している、②親密な人間関係に基づいた地域の子育て力がある、③何よりも子どもが大事という価値観がある、④子育てしやすい環境が整っているということが明らかになった。
3)一連のワークショップは、参加者が自分自身のなかにある「次世代に継承していくもの」をテーマとし、さまざまな「気づき」を促してきた。即数値としての効果をはかることは難しいが、地道な積み重ねが、やがて確実に地域を変えていく活動になり得るといえよう。
4)少子化対策として、相互関係性の継続の教育が大切であり、幼少時期から妊娠・出産・育児へのポジティブイメージを体験や人と人との交流を介して伝えることが有効であると考えられる。
5)シンポジウムでは、現代の子産み・子育てを豊かなものにしていくためには、子育て環境をめぐる地域や家族、世代間といった人間同士の関係性、交流が重要であることが出席者共通の認識として提出された。
結論
人と人とのかかわりのきっかけをつくる行政医療施策、関係性に基づく地域づくりの支援の観点から結論として政策提言を提示した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200500001B
報告書区分
総合
研究課題名
少子化社会における妊娠・出産にかかわる政策提言に関する研究
課題番号
H15-政策-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
福島 富士子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 小林秀資(長寿科学振興財団)
  • 三砂ちづる(津田塾大学 学芸学部)
  • 飯田史彦(福島大学 経済学部)
  • 竹内正人(日本赤十字葛飾産院)
  • 岡本悦司(国立保健医療科学院 )
  • 柳澤秀明(埼玉県熊谷保健所)
  • 宮里和子(愛知医科大学看護学部)
  • 奥田博子(国立保健医療科学院 )
  • 角田由香(久留米大学 文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、「よい妊娠、出産、産褥、子育て」を経験すれば、その次の子どもを産む動機となるとの仮説を持ち、現場での調査をもとに、実態に即した政策提言をすることを目的としている。
研究方法
初年度は出産に着目し、妊娠から出産・産褥、育児まで継続ケアを行っているモデル施設の調査を行った。二年目は、高出生率の地域における聞き取り、先進的な地域での取り組みを通して地域ぐるみの継続支援についての政策提言を目指す研究を行った。最終年度はこれまでの成果を踏まえ、出生率が最も高い沖縄県多良間村の多産要因をさらに掘り下げ次世代の妊娠出産へのアプローチに還元した。
結果と考察
初年度の研究からは、モデルとなる施設の経営戦略とは、「まずは強力な満足促進要因となるような差別化を実現し、個性化をはかる」であることが明らかになった。しかしながら、実際には出産施設において、継続の必要性を認識し対策をとっている施設は、そこで働く人の姿勢や熱意によるところが大きい実態があった。
 文献研究においては、助産師による出産ケアサービスがリスクを軽減し、医療費を削減する外部的効果があるという報告もみられた。同時に、助産師によるサービス生産の費用構造の分析例があまりなく、施設運営者に経営センスが求められていない背景も浮かび上がった。
二年目は、①子産み子育てを地域で支える関係性の再構築②価値観の変容が重要であることが示唆された。質的研究に基づく考察を行い、現代科学的な価値観の中で切り捨てられてきた相互関係性の継続を回復することが、抜本的な少子化対策として必須であることが明確になった。また、行政の役割は、豊かな住民の活動を促すために土壌を耕し種をまく施策と、住民の活動を育て支えていく継続的な支援であることがわかった。同時に、国の政策や考え方が市町村レベルで的確に実行され、成果や課題を住民や地域から吸い上げて国に持ち上げることのできるしくみづくりが急務であることが示唆された。
最終年度では、密な人間関係や地域で伝承されていく風土が出産および子育ち・子育てを豊かなものにしていくことが平成16年度の研究結果で示唆されたのを受け、関係性をつなぎ直す具体的な試みとして、埼玉県和光市を地域実践の場としてワークショップを開催し、最後に以上の調査、実践活動を通して、研究班員による具体的政策提言を行った。
結論
人と人とのかかわりのきっかけをつくる行政医療施策、関係性に基づく地域づくりの支援の観点から結論として政策提言を提示した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現代の子産み・子育てを豊かなものにしていくには、子育て環境をめぐる家族や地域、世代間といった人間同士の関係性が重要であることが示唆され、最終年度はそれまでの成果を踏まえ、出生率が最も高い沖縄県多良間村の多産要因を掘り下げ次世代の妊娠出産へのアプローチに還元した。住民と共に人づくりを視野に入れた質的研究を行ってきたが、固定化されたプログラムではなく、地域の日常へ還元するためには、柔軟にプログラムを活用できるファシリテーターを地域と行政をつなぐコーディネーターが重要であり、その養成を始めた。
臨床的観点からの成果
平成16年度の調査により高出生率の宮古島・多良間村モデルから、全国に適用できる対策として ①子育てを地域で支える関係性の再構築 ②価値観の変容が、抜本的な少子化対策として必須であることが明確になったのを受け、関係性をつなぎ直す具体的な試みとして、埼玉県和光市を地域実践の場としてワークショップを開催してきた。ワークショップは今後も継続する予定であり、住民とともに地域の日常に即した参加型プログラムの開発を目指している。
ガイドライン等の開発
3年間の成果を踏まえ、以下の観点から政策提言を行った。
Ⅰ 人と人とのかかわりのきっかけをつくる行政医療施策
① 地域に根ざした産科施設・助産院の配置
② 母子同室の推進
③ 母乳育児の推進
④ 家族のかかわりをつくる新生児訪問の充実
⑤ 関係性を中心としたマタニティクラスの展開

Ⅱ 関係性に基づく地域づくりの支援
⑥ いのちをつなぐ次世代への母性をはぐくむアプローチ
⑦ 大人の自己改革の展開 
⑧ 継続的な世代間交流をはかる環境づくりの推進
その他行政的観点からの成果
良いお産は、次世代育成のひとつのキーワードであるが、次世代育成支援において、母子保健はやや消極的な印象を与えがちであった。それに対し、本研究では、「よい妊娠、出産、産褥、子育て」を経験すれば、その次の子どもを産む動機となるとの仮説を持ち、現場での調査をもとに、実態に即した政策提言をすることを目的とし、実現可能な政策提言のために、様々な領域から総合的に考察および検討を行ってきた。結果的に、出産から子育て、家族から地域までを継続的に支える視点を打ち出させた意義は大きい。
その他のインパクト
本研究では、参加者が自分自身の中にある「次世代に継承していくもの」をテーマに。継続的にワークショップを以下の通り、実施してきた。
第1回 平成16年7月7日「今子どもたちに伝える大事なことは何か」
第2回 平成17年7月11日「私たちから子どもたちへ伝えていくこと」
第3回 平成17年12月8日「親としての原点を振り返る」
なお、平成17年12月3日には「世代間交流から考えるまちづくり・地域づくりー場の交流から地域の日常へー」と題し、公開シンポジウムを行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
福島富士子他「子どもを犯罪から守る住民主体の地域ネットワークの展開」「思春期の子どもを持つ親の`気づき`を促すワークショップの実践」(思春期学会 2005)「ワークショップの実践報告」(同、2006)
学会発表(国際学会等)
1件
福島富士子待鳥美光「少子化社会における世代間継承をめざしたワークショップの試み」世代間交流国際フォーラム 2006
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
「世代間交流から考えるまちづくり・地域づくり 場の交流から地域の日常へ」(2005年12月3日) 「少子化における妊娠・出産・子育てや地域づくりに関する誌上シンポジウム」(2006年3月6日)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-