循環式浴槽における浴用水の浄化・消毒方法の最適化に関する研究

文献情報

文献番号
200401325A
報告書区分
総括
研究課題名
循環式浴槽における浴用水の浄化・消毒方法の最適化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所(寄生動物部))
研究分担者(所属機関)
  • 八木田 健司(国立感染症研究所(寄生動物部))
  • 泉山 信司(国立感染症研究所(寄生動物部))
  • 倉 文明(国立感染症研究所(細菌第一部))
  • 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所)
  • 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所)
  • 福井 学(北海道大学(低温科学研究所))
  • 荒井 桂子(横浜市衛生研究所)
  • 縣 邦雄(アクアス・つくば総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
浴用水に繁殖する微生物は源泉に含まれる有機物量と入浴者が持ち込む量に依存する。浴槽中の溶存有機物は系内に生息する微生物により消化されて見かけ上減少するが、微生物という形で留まる。系内の微生物がレジオネラの温床であるにもかかわらず、蓄積された微生物を除外して水質管理が論議されてきた感がある。翻って、現行では塩素消毒が推奨されており、溶存有機物は異化されず、入浴者数とともに増加し続けることになった。当該研究は蓄積される総有機物の量的規制により浴槽水の管理を行うべきと確信し、その根拠を示し、管理指標を示すことで微生物学的な安全を確保しようとするものである。
研究方法
文献資料からプール水の有機物量の測定結果を得て、これより入浴者が持ち込む有機物量を推定した。具体的にはKMnO4消費量の推移の近似式を立てて、持ち込む汚染量を推定した。同様に循環式浴用水からも汚染量を求めた。源泉の全有機炭素/従属栄養細菌を測定した。モデル循環水で汚染の進行状態を検討した。宿主アメーバ内での菌数の定量と増殖速度を検討した。浴槽ではレジオネラ以外の病原菌として抗酸菌を調査した。
結果と考察
レジオネラは入浴者の持ち込む有機物を栄養源として、細菌⇒宿主⇒レジオネラの増殖という構図をとる。対策は生態系を断つことで、有機物量の制御にあると考える。人由来の有機物量は、前日の残留分に追加分を加算した値に希釈率を掛けた値と仮定される。一人の持ち込み量を0.5g程度として得られる値は実測値と近似した。浴槽水で同様の結果を得た。モデル循環浴槽を大気開放状態で管理し、微生物の挙動を検討した。塩素注入時には微生物は認められず、有機物量が初期値を維持した。停止後に細菌類はすみやかに増殖し、14日目にレジオネラが検出された。この間、有機物量は減少した。アメーバ内のレジオネラ数は平均1,000個程度に達するが、増殖に差があった。
結論
研究成果によりレジオネラ汚染に至る過程、それが循環式浴槽の構造から生じていることは周知された。しかし、なお営業者に対して明確な管理指標を示すことが安全確保に必須と考える。対策の根本は生態系を断つことにあり、持ち込まれる有機物量の制御にある。当該年度の検討から一人が持ち込む有機物量は0.5g と計算された。有機物量の制御は塩素管理上でも重要である。レジオネラの感染性、レジオネラ以外の浴用水中の病原体等についても検討している。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-