生活環境におけるレジオネラ感染予防に関する研究

文献情報

文献番号
200401321A
報告書区分
総括
研究課題名
生活環境におけるレジオネラ感染予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 真一(九州大学大学院 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 江崎孝行(岐阜大学大学院 医学研究科)
  • 宮本比呂志(産業医科大学 医学部)
  • 古畑勝則(麻布大学 環境保健学部)
  • 三宅政紀(静岡県立大学 薬学部)
  • 青木洋介(佐賀大学 医学部)
  • 田口善夫(天理よろづ相談所病院 呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活環境におけるレジオネラ感染を予防するために、1.レジオネラの分布と生態を明らかにする、2.レジオネラの性質とくに病原性の機序を知る、3.迅速診断法を開発する、4.生体防御の破たんと病態を解明する、5.臨床データを解析し的確な診断法と治療法を確立する、という5つの目的を設定し研究を行っている。
研究方法
1.全国の温泉水からレジオネラの分離を行ない、菌種・血清型の同定、菌数測定、分離菌株の薬剤感受性、パルスフィールド、細胞内増殖性をみた。生態の研究はバイオフィルムを形成する条件と形態学的解析を行った。2.病原性の研究のために分子遺伝学的およびプロテオミクスの研究手法を用いた。3.迅速診断法はレジオネラ菌種を識別できる塩基配列を決定し、DNAマイクロアレイを作成して行った。4.臨床疫学的研究は過去5年間のレジオネラ感染症例の診断・治療法・予後の調査を行うとともに、日向での集団感染事例をBayes法により解析した。
結果と考察
1.全国各地の温泉水656試料についてレジオネラ属菌の検出を試み、43都道府県で採取した188試料(28.7%)からL.pneumophilaが検出された。分離株はRFP、キノロン系、マクロライド系薬剤に感受性があった。パルスフィールドでは温泉由来株に特異的なパターンはなく多様性があった。2.215株すべての水環境分離株が病原性を持っていることを明らかにした。3.環境中および臨床検体からのレジオネラ迅速検出法と患者の迅速診断法の開発研究では、1)LAMP法は従来の培養法に比べて検出率が高く、しかも簡便・迅速で有用であることを明らかにした。2)16SrDNAでは区別できない菌種をdnaJ遺伝子で検出することで、両遺伝子を標的にしたDNAマイクロアレイを作成した。3) 抗原アレイの作成のための抗原の精製とクローニングを行い、さらに15血清型の LPS抗原を精製した。4.レジオネラ感染症の臨床疫学的データを蓄積し、有効な診断、治療方法を明らかにするとともに、臨床疫学的解析に基づくレジオネラ感染症の確率的診断法を開発している。
結論
温泉水が全国的にレジオネラに汚染されており、分離菌は病原性をもつことが明らかとなった。L. pneumophilaのバイオフィルム形成に関する新知見、細胞内侵入・細胞内増殖に関わる新規因子を発見した。レジオネラ属の網羅的な遺伝子迅速診断法の開発も進展した。臨床診断では尿中抗原検出の有用性が示され、集団発生を対象として検査前確率を定量的に求める方法を考案した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-