シックハウス症候群の疾患概念に関する臨床的・基礎医学的研究

文献情報

文献番号
200401317A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の疾患概念に関する臨床的・基礎医学的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
鳥居 新平(愛知学泉大学 家政学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 龍雄(国立大学法人名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)
  • 秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 西間 三馨(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
  • 高橋 清(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)
  • 永井 博弌(岐阜薬科大学 薬理学講座)
  • 岡本美孝(国立大学法人千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・咽頭部腫瘍学)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科 生体システム・免疫システム医科学・環境免疫病態皮膚科学)
  • 中村 陽一(独立行政法人国立病院機構高知病院 臨床研究部)
  • 内尾英一(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター 眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
29,345,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 シックハウス症候群(SHS)はわが国では保険病名に収載されており、行政の取り組みも積極的に行われているが、その疾患概念はまだ曖昧な点が多い。
 そこでわが国におけるSHSの病態について科学的根拠に基づいた概念を明らかにし、予防・治療法の開発にも貢献することを目的とする。
研究方法
 SHSの特異性を把握するために調査票による班構成メンバーを対象に多施設にわたる調査を実施した。
 臨床的研究は臨床各科のアレルギー専門医に、基礎的研究は動物モデルの作成を目標にして薬理学者に分担を依嘱した。
結果と考察
 SHSの概念の特異性をさらに明らかにすることができた。
関連する生物因子として取り上げた室内塵中のLPS濃度は対照群との間に有意差は認められなかったが、症状の悪化にLPSの関与を示唆するSHSの1例を経験した。
 SHSの眼病変はアレルギー性炎症との類似性が高く、アレルギーの関与が示唆された。
FAの大量暴露によりSHS類似症状が発症することを解剖実習担当教官、実習生を対象とした研究で明らかにした。
 カプサイシン吸入咳誘発試験の結果からSHSにみられる過敏性の発現には知覚神経C-fiberの過敏性亢進が関与していることが推測された。
 化学物質負荷試験の検討からその利点、問題点の一部が明らかになった。
 神経原性炎症惹起作用や皮膚反応亢進作用はSHSの重要な病態の1つであるが、これらは一部のVOCのみにみられる効果であることがわかった。
 FAを反復塗布したマウスで免疫系のTh2系へのシフトと知覚神経C-fiber受容体や各種神経成長因子の発現増強がみられる動物モデルの作成に成功した。
 この動物モデルはSHSの病態におけるアレルギー学的機序、神経生理学的機序の解明に大きく貢献するものと思われる。
結論
 SHSの概念の特異性をかなり明らかにすることができた。
 SHSにみられる眼症状にはアレルギー学的機序が関与している可能性が示唆された。
 SHS症状がVOC大量曝露を契機に起こりうることをFA大量曝露の機会が多い解剖学実習担当教官や実習生を対象とした研究から明らかにした。
 SHSでは知覚神経C-fiberの役割が重要であることが臨床研究から示唆された。
 FA反復塗布により作成された動物モデルからVOC曝露が免疫系のTh2系へのシフトと神経成長因子やC-fiber受容体発現の増強を伴うことが明らかにされた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-06
更新日
-