紫外線照射による健康影響とその予防に関する研究

文献情報

文献番号
200401316A
報告書区分
総括
研究課題名
紫外線照射による健康影響とその予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
福原 潔(国立医薬品食品衛生研究所(有機化学部))
研究分担者(所属機関)
  • 川西正祐(三重大学医学部(衛生学教室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
紫外線は生活関連物質や環境汚染物質、生体分子を活性化して活性酸素等のラジカルを発生して生体機能障害を引き起こし、癌や心臓病などの生活習慣病の発症や老化の原因となる。しかしながらその作用機構については殆ど明らかにされておらず、紫外線の人への健康影響は的確に評価されていない。そこで、光毒性に関連すると思われる生活関連化学物質についてラジカル生成機構の解析とラジカル毒性の予防目的に資する新規抗酸化剤の開発を検討した。
研究方法
DNA 損傷機構や損傷の塩基特異性の解析は、ヒトがん原遺伝子 c-Ha-ras-1 及びがん抑制遺伝子 p53 やp16から変異のホットスポットを含む 100-400 bp の断片をサブクローニングした後、DNA断片の末端をP同位体で標識した。次に、各種光増感物質とともにリン酸緩衝液(pH 7.8)中でUVAを照射した後に電気泳動を行ない、DNA損傷性を検討した。レスベラトロール誘導体は、構造をスチルベン骨格のオレフィン部分でA環(3,5-ジヒドロキシ誘導体)とB環(4-ヒドロキシ誘導体)の二つに分け、A環をリン酸エステル体、 B環をアルデヒド体にそれぞれを合成した後、Wittig-Honer反応によって縮合させて合成した。
結果と考察
農薬に用いられるメルカプトベンゾチアゾールが紫外線照射によって生体高分子を酸化的に損傷することが明らかとなり、今後は農薬の人への安全性の評価に紫外線影響を十分に検討することの必要性が示された。一方、紫外線によって引き起こされるラジカル毒性の予防物質として、葡萄果皮に含まれているポリフェノール(レスベラトロール)について遺伝毒性の軽減と抗酸化能の増強を目的とした誘導体(メチルレスベラトロール)を開発した。さらに、紫外線の有効利用の観点から光線力学療法(PDT)に応用可能は光増感剤の探索を行い、TMPyP、ベルベリン、パルマチンは紫外線照射時に一重項酸素を発生してDNA障害を起こすことからPDTへの応用に有効であることがわかった。
結論
地球環境の悪化によって紫外線照射量が増加すると生活関連化学物質が活性化されてラジカル毒性を引き起こし、人の健康に重大な影響を与えることが科学的に証明された。また、その予防的化学物質投与において優れた新規抗酸化剤が開発できたことは、本研究結果が厚生労働行政上、科学的根拠に基づいた政策の一環として国民の健康維持に貢献することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200401316B
報告書区分
総合
研究課題名
紫外線照射による健康影響とその予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
福原 潔(国立医薬品食品衛生研究所(有機化学部))
研究分担者(所属機関)
  • 川西 正祐(三重大学医学部(衛生学教室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
光増感剤等の化学物質は紫外線照射によって活性化されて活性酸素などのフリーラジカルを発生し、それが人の健康に重篤な影響を与えることが予測される。本研究事業では紫外線によって毒性に関連すると思われる生活関連化学物質や環境化学物質、または生体関連化学物質について紫外線照射下での遺伝毒性を明らかにするとともに、その毒性発現機構について詳細な検討を行った。さらに、紫外線によるラジカル毒性の予防目的に資する新規抗酸化剤について検討を行った。
研究方法
DNA 損傷機構や損傷の塩基特異性の解析は、ヒトがん原遺伝子及びがん抑制遺伝子をサブクローニングした後、末端をP同位体で標識して利用した。
結果と考察
(1) 発がんや光アレルギー性疾患に関連すると思われる食品成分や医薬品(芳香剤として利用されているニトロムスク、化粧品や食品添加物等に使用されている二酸化チタン、医薬品として用いられているベルベリン)が光照射下、DNAを酸化的に損傷して遺伝毒性を発現する機構を明らかにした。
(2) 環境化学物質(大気中の主な汚染物質である6-ニトロベンツピレンや農薬に用いられているメルカプトベンゾチアゾール)や医薬品類(葉酸の代謝拮抗剤のメトトレキサートや目や色素分子のローダミン)が光照射によって毒性を発現する機構を明らかにした。
(3) 紫外線によるラジカル毒性の予防に利用が可能な化学物質の開発を行い、緑茶成分の天然カテキンの立体構造を固定した平面型カテキン誘導体を新規に合成した。本化合物は強力な抗酸化効果および抗酸化剤の毒性として報告されているプロオキシダント効果が軽減されていることがわかった。また、葡萄果皮に含まれているレスベラトロールについて遺伝毒性の軽減と抗酸化能の増強を目的としてメチル誘導体を5種類合成した。メチル誘導体の抗酸化能はレスベラトロールと比べて飛躍的に増強していることがわかった。さらに、植物成分のキサントン誘導体が皮膚癌や光過敏症に対する化学予防物質として有効であることを明らかにした。
結論
地球環境の悪化によって紫外線照射量が増加すると生活関連化学物質等が活性化されてラジカル毒性を引き起こし人の健康に重大な影響を与えることが科学的に証明された。また、その予防的化学物質投与において優れた新規抗酸化剤が開発できたことは、本研究結果が厚生労働行政上、科学的根拠に基づいた政策の一環として国民の健康維持に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-