口腔疾患、特に歯周疾患に及ぼす煙草煙の悪影響とその対策に関する研究

文献情報

文献番号
200401284A
報告書区分
総括
研究課題名
口腔疾患、特に歯周疾患に及ぼす煙草煙の悪影響とその対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
雫石 聰(大阪大学大学院 歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 埴岡 隆(福岡歯科大学歯学部)
  • 瀬戸 皖一(福岡歯科大学歯学部教授)
  • 奥田 克爾 (東京歯科大学)
  • 川口 陽子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 石井 拓男(東京歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疫学研究や基礎研究により煙草煙暴露が口腔疾患のリスク因子であることを明らかにすること、喫煙と口腔保健行動・意識に関する調査を行うとともに、喫煙が及ぼす歯科医療費への影響について評価すること、ガムタバコと口腔疾患との関連性を調べることを目的とした。
研究方法
某企業従業員を対象に歯周診査を行い、自記式質問票により喫煙要因を評価した。唾液中の種々のバイオマーカーおよび歯周病細菌を測定した。また、症例対照研究として解析した。口腔写真によりメラニン色素沈着を診査し、喫煙状況を質問紙により調査した。外来患者の生活習慣調査と口腔粘膜疾患の診査をした。ガムタバコの文献調査を行った。喫煙が歯周炎局所細菌叢に与える影響と煙草成分の炎症性サイトカイン産生について検討した。歯科学生の喫煙習慣や禁煙指導への関心と歯科保健医療従事者の健康習慣に関わる質問票調査をした。タバコと口腔疾患に関する新聞記事を分析した。喫煙による歯周疾患の超過医療費の算出モデルを試作した。
結果と考察
受動喫煙および能動喫煙ともに歯周病有病に対して有意のオッズ比を示した。また、受動喫煙ではいくつかの唾液バイオマーカーが有意に高い値を示し、歯周組織への影響が示唆された。歯肉メラニン色素沈着は、能動喫煙と関連があり、子どもでは受動喫煙と関連があることが判明した。口腔粘膜疾患発現のリスクとして、喫煙量や喫煙年数が有意に高いオッズ比を示した。喫煙者では歯周ポケットが深くなるにつれて数種の歯周病細菌の検出率が増加し、煙草成分はIL-8産生をわずかに上昇させた。歯科学生の喫煙行動は大学入学後に習慣化し、禁煙指導に対して消極的であること、歯科医療従事者は生活習慣を改善する経験を十分に積む余地があることが示された。わが国におけるタバコと口腔疾患に関する情報が非常に少ないことが判明した。喫煙による歯周疾患の超過医療費は歯周疾患医療費の約20%と推計された。日本のガムタバコ対策は、欧米各国での喫煙対策の進展等の議論を参考にして検討する必要があり、ガムタバコの口腔への影響として、ニトロソアミン類の体内への取り込み量について検討する必要があると考えられた。
結論
煙草煙暴露が歯周疾患、歯肉メラニン色素沈着や口腔粘膜疾患に悪影響を及ぼすことが示されたが、その情報は充分に国民等に活用されているとはいえず、喫煙による歯科医療費の影響も大きいことが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-