遺伝子解析に基づく循環器病・糖尿病の予防医療診療の試み

文献情報

文献番号
200401279A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子解析に基づく循環器病・糖尿病の予防医療診療の試み
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三木 哲郎(愛媛大学医学部(老年医学講座))
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 郁子(愛媛大学医学部(環境社会学講座環境遺伝学分野))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
耐糖能異常や高血圧、脂質代謝異常、肥満は、それ単独よりも重複して発症することが明らかとなってきた。この重複は、偶発的な期待値より高頻度で生じていることから、各々の危険因子は互いに独立したものではなく、成因上互いに密接に関連しているものと考えられている。最近になって、このような病態を「メタボリックシンドローム(MS)」と定義されるようになってきた。MSの発症には、複数の環境因子と遺伝因子とが相互作用をもって関与し、加齢や性なども修飾因子として働く。このうち、環境因子については多くのエビデンスが蓄積されてきたが、遺伝的背景についてはまだ多く検討の余地が残されている。そこで本研究では、MSと、そのなかで本邦での有病率が最も高い高血圧について、その遺伝的背景を検討した。
研究方法
MSとGタンパク質β3サブユニット遺伝子C825T多型との相関を、人間ドック受診者を対象として検討した。その結果、当該遺伝子多型と肥満、高血圧、高中性脂肪、糖尿病とに有意な相関は認められなかった。しかし、いずれの疾患も有さない対象では、年齢と性別を調整した上でも遺伝子多型頻度に有意な偏りがみられた。
結果と考察
高血圧と、ドーパミン水酸化酵素遺伝子(DBH)C-1021T多型との関連について、人間ドック受診者および一般企業従業員を対象として検討した。その結果、高血圧と遺伝子多型とには直接的な相関は認められなかった。しかし、遺伝子多型と血糖値との交互作用は、年齢、性別、BMI、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪を共変量として調整した上でも、高血圧に対して有意な説明変数となった(p=0.031)。同様に血圧値に対するDBH 遺伝子多型と血糖値との交互作用について検討した。その結果、拡張期血圧に対して遺伝子多型と血糖値との交互作用は有意な相関を示した。これは、性別、年齢、BMI、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪を調整した上でも同様の結果であった(p=0.0060)。一方、収縮期血圧については、同様の傾向を示したものの、有意差を示すには至らなかった。
結論
GNB3遺伝子C825T多型では、Tアレルがリスク因子となり、高血圧および代謝性疾患の集積と相関することが示された。DBH遺伝子C-1021T多型は、血糖のコントロール不良を介し、高血圧/血圧上昇と相関することが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-