喫煙の社会的損失と効果的な禁煙対策に関する研究

文献情報

文献番号
200401274A
報告書区分
総括
研究課題名
喫煙の社会的損失と効果的な禁煙対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
友池 仁暢(国立循環器病センター(病院))
研究分担者(所属機関)
  • 花井 荘太郎(国立循環器病センター(研究所))
  • 大森 豊緑(和歌山県福祉保健部健康局)
  • 大久保 一郎(筑波大学大学院人間総合研究科 ヒューマン・ケア科学専攻保健医療政策学分野)
  • 大日 康史(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は禁煙推進に資することを目的として、普及啓発のあり方や禁煙指導の手法等について行動科学等の手法を用いて検討するとともに、禁煙補助に用いられるニコチンパッチの需要分析を行う。
研究方法
(1)禁煙対策とその教育:大森は受動喫煙対策、未成年喫煙防止、禁煙支援を取り上げ、和歌山県内の官公庁施設における禁煙・分煙対策を進めた。さらに、関係者による禁煙対策協議会を組織し、学校等における積極的な禁煙教育、マスメディア等による受動喫煙防止キャンペーン、禁煙を希望する教職員に支援プログラムの導入等を行った。友池、花井は施設内における禁煙意識の向上と喫煙者を減らすことを医療施設機能改善の一環として実施した。(2)禁煙プログラム有用性の検討:大久保らはニコチンパッチのスイッチOTC(over the counter:一般用医薬品)化の需要分析、大日らは禁煙プログラムとニコチンパッチのOTC化に関する費用対効果分析を行った。
禁煙補助薬剤の利用に関する仮想的質問事項について2004年12月、Webを用いて調査した。調査会社の保有するリストを用いて年齢20―59才の喫煙者4,600名を無作為に抽出し対象とした。ニコチンパッチの需要分析では、医療機関と大衆薬局を対比させた仮想的質問を行い、費用、時間帯、片道時間、保険適用、薬剤師の説明等を軸として、コンジョイント分析を行った。これらの推定をもとに費用対効果を検討した。
結果と考察
(1)喫煙者に対する禁煙支援のための禁煙相談室(外来)は有用であった。病院内禁煙の完全実施に敷地内の喫煙区域設定は不可避であった。(2)ニコチンパッチOTC化の需要分析2,389名(回収率51.9%)から回答を得た。男性1,516名(63.5%)、女性873名(36.5%)、年齢は50-59歳が最も多く901名(37.7%)、次いで40-49歳(28.8%)であった。禁煙経験は1,481人(62%)に有であった。試行回数は2回が最も多く433名(29.2%)、4回以上316名(21.3%)。ニコチンパッチのOTC化の希望は有りが1,243名(52%)であった。禁煙に関する関心度は一日の本数が10本以下と51-60本、禁煙経験のある人で高かった。
結論
効果的な禁煙支援として和歌山県の取り組みは好例と思われる。大久保らの調査は喫煙者の約半数に禁煙経験があることを明らかにした。このことは禁煙指導の有効性を高める方策が必要なことを示している。禁煙指導を保険診療に取り上げる、ニコチンパッチの費用を下げる、OTCとして入手しやすくする等の試みは有効と期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200401274B
報告書区分
総合
研究課題名
喫煙の社会的損失と効果的な禁煙対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
友池 仁暢(国立循環器病センター(病院))
研究分担者(所属機関)
  • 花井 荘太郎(国立循環器病センター(研究所))
  • 大森 豊緑(和歌山県福祉保健部健康局)
  • 大久保 一郎(筑波大学大学院人間総合研究科 ヒューマン・ケア科学専攻保健医療政策学分野)
  • 難波 吉雄(東京大学 医学部 老年学科)
  • 大日 康史(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
効果的な禁煙の実施方法を探り、喫煙対策の推進に資することを目的に、禁煙方法や指導法に関するエビデンスを集積し、それらの有効性を検討する。社会的・経済的損失を明らかにし、喫煙対策強化の必要性を示す。
研究方法
1)喫煙の実態と禁煙認識に関する調査:喫煙が健康被害を及ぼすことが疫学的に実証されている11疾患について、それぞれの有病者各100名を対象に喫煙の実態をWeb調査した(平成14年)。医療従事者の喫煙実態と禁煙認識については研究者の勤務する病院でアンケート調査を行った(平成14,15年)。2)禁煙対策と教育:ドイツと米国の禁煙施策を調査し、有効な教育法を探った(平成14年)。禁煙施策については、千代田区を例に有効性の検討(平成14年)、さらに和歌山県において、教育実践を行政レベルで広く行った。3)禁煙プログラムの需要分析:禁煙プログラムの需要分析を平成15年は無作為に抽出した一般患者4,000名、疾病を有する患者4,000名を対象にWeb調査を行った。平成16年はニコチンパッチの普及条件をWeb調査で探った。なお、これらの調査のうちアンケートは全て対象者個人の発意に基づくものであり、匿名化した情報として返却されており、自己決定権を制限するものではない。
結果と考察
1)慢性疾患患者の女性喫煙率は29.5%と全国平均9.9%より遥に高率であった。特に、1985年以降に成人を迎えた世代は60%と極めて高率であり、今後の喫煙対策の重要性を示唆した。病院勤務者の喫煙率は平成14年平均21.2%、平成15年17.8%と確実に減少しつつある。2)禁煙治療行為を成功させる為の手法を米国とドイツについて調査し(平成14、15年)、その成果を日本循環器学会の禁煙プログラムや地域の禁煙推進運動に活用した(平成15,16年)。3)禁煙プログラムの需要分析から参加確率を増す条件を明らかにした。
結論
喫煙率は、健康増進法の施行もあって、確実に減る傾向にある。喫煙者の62%は禁煙を試みた実態が明らかになった。従って有効な禁煙手法の開発が望まれる。本研究は禁煙プログラムへの参加確率から各プログラムの需要分析を行った。ニコチンパッチの普及方法についてもその有効性を数理的に検討した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-24
更新日
-