温泉利用健康増進施設が住民の生活の質と健康寿命の改善に果たす役割に関する研究

文献情報

文献番号
200401273A
報告書区分
総括
研究課題名
温泉利用健康増進施設が住民の生活の質と健康寿命の改善に果たす役割に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
鏡森 定信(富山医科薬科大学(医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 松原 勇(石川県立看護大学(看護学科))
  • 梶田 悦子(名古屋大学(医学部))
  • 土井 由利子(国立保健医療科学院(疫学部))
  • 中谷 芳美(浜松医科大学(医学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
温泉を使った健康増進施設の利用状況と健康寿命の延伸を左右する脳卒中・骨折の発生や健康状態及び生活の質との関連を、地域ならびに職域集団を対象とした追跡調査により疫学的に明らかにすることを目的に研究を行った。
研究方法
地域及び職域集団を対象に以下の4研究を行った。①総合計画に基づいて温泉を使った健康増進施設を開設し、多くの町民の施設利用が達成された富山県J町における40歳以上住民の脳卒中・骨折の発生や健康状態について追跡調査を行い、ベースライン時の温泉の利用状況との関連を分析した。②長野県内の温泉地であるA村における週1回の温泉運動浴教室の効果を明らかにするために、70歳以上の女性の温泉運動浴継続群と対照群とについて、呼吸・循環系、筋骨格系、平衡機能などの検診項目について横断及び追跡的に比較を行った。③職域集団における温泉利用と健康増進との関連については、温泉やその関連施設で休養・保養を目的とした滞在が、ホワイトカラーの睡眠の質やWHO-QOLの心身の健康度とどのように関連しているかを、職域ストレスやその他の関連要因を調整して分析した。④温浴の実験的研究では、朝の入浴後の睡眠への影響を、脳波や心拍変動による自律神経活動などの客観的指標及び熟睡感や気分などの主観的指標から入浴しなかった場合と比較して検討した。
結果と考察
①J町における40歳以上の温泉利用頻度の多い群では、少ない群に比較して温泉を使った健康増進施設開設後3年間の追跡調査で脳卒中、骨折、死亡の発生が少なかった。この結果は、運動習慣とWHO-QOLを調整しても変わらなかった。②A村の温泉運動浴の効果については、平均2.2年以上継続的に参加している70歳以上の女性では、運動浴を実施していない群に比較して平衡機能や脚筋力が優れていた。③温泉を使った施設での休養・保養を目的とした滞在では、それが多い群ではそれが少ない群に比較して、睡眠の質や身体的及び精神的健康度が高かった。また、このような差異は、日常の入浴頻度に影響を受けなかった。④朝の温浴では、温浴しない場合に比較して睡眠時間そのものは増えなかったが、相対的にREM睡眠が増加し、睡眠後の気分も良好になることが分かった。
結論
温泉は、その適切な利用を通じて、健康寿命の延伸や生活の質の向上などの面から健康増進に寄与することを疫学的及び実験的に明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200401273B
報告書区分
総合
研究課題名
温泉利用健康増進施設が住民の生活の質と健康寿命の改善に果たす役割に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
鏡森 定信(富山医科薬科大学(医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 松原 勇(石川県立看護大学(看護学科))
  • 梶田 悦子(名古屋大学(医学部))
  • 土井 由利子(国立保健医療科学院(疫学部))
  • 中谷 芳美(浜松医科大学(医学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
温泉を使った健康増進施設の利用が、健康寿命の延伸を左右する骨折や脳卒中の発生及び生活の質にどのように影響するかを、地域や職域集団を対象にした疫学的ならびに実験的研究から明らかにすることを目的とした。また、温泉利用に伴うリスク管理の視点からレジオネラ感染と循環器事故に関しても調査・研究を行った。
研究方法
以下の5研究を行った。
①温泉を使った健康増進施設の地域の健康寿命に対する影響の研究では、総合計画に基
づいて温泉を使った健康増進施設が開設され、多くの町民の利用が達成されたJ町において、40歳以上の全住民6000人を対象に追跡調査を行った。②A村の週1回の温泉運動浴教室の効果に関する調査では、運動浴を実施している70歳以上の女性と対照を追跡し、呼吸・循環系、筋骨格系、平衡機能について比較研究を行った。③職域では、温泉やその関連施設に休養・保養を目的に滞在した経験の有無と、現在の健康状態、睡眠の質、病欠の関連を分析した。④温浴の実験的研究では、朝あるいは夕方の温浴後の睡眠の質や心理的健康への効果を検証した。⑤温泉利用に伴う危険として、レジオネラ感染と循環器事故について調査と実験を行った。
結果と考察
①40歳以上の温泉利用頻度の多い群では少ない群に比較して、3年間の追跡調査で死亡および骨折の発生が有意に、脳卒中は有意の傾向で少なかった。この結果は、運動習慣とWHO-QOLといった交絡要因を調整しても変わらなかった。②平均2.2年以上温泉運動浴を継続している70歳以上女性では、対照群に比較して、平衡機能や脚筋力が優れていた。
③温泉やその関連施設に休養・保養を目的に滞在した経験の多い群では、それが少ない群に比較して、病欠が少なく、睡眠の質、WHOの身体・精神的QOLが有意に高かった。これらの結果は、日常の入浴、職域ストレスなどの交絡要因を調整しても変わらなかった。④朝夕の温浴いずれの場合もその後に睡眠の質の向上をもたらした。⑤温泉利用時のレジオネラ感染の危険性は依然として存在し、また、循環器系では出浴時及び出浴後30分程度は、起立性失調の危険が高かった。
結論
以上、温泉の適切な利用が、生活の質の向上と健康寿命の延伸に奇与することを明らかにした。但し、温泉利用には、レジオネラ感染や循環器事故の危険もあり、これらに対して迅速で適切な対応に関する啓発及び関連施設の基盤整備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-