アルミニウムなどの金属とアルツハイマー病発症機構との因果関係に関する研究

文献情報

文献番号
200401258A
報告書区分
総括
研究課題名
アルミニウムなどの金属とアルツハイマー病発症機構との因果関係に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院・医学系研究科ポストゲノム疾患解析学講座プロセシング異常疾患分野(精神医学))
研究分担者(所属機関)
  • 遠山正彌(大阪大学大学院医学系研究科ポストゲノム疾患解析学講座・解剖第二学講座)
  • 飯塚舜介(鳥取大学医学部医学科医療環境学講座)
  • 高島明彦(理化学研究所 脳科学総合研究センターアルツハイマー病研究チーム)
  • 橋本亮太(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第3部)
  • 大河内正康(大阪大学大学院医学系研究科ポストゲノム疾患解析学講座 プロセシング異常疾患分野(精神医学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
32,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
以前よりアルミニウムを始めとする環境因子がその発症に関連する可能性を示す報告が蓄積している。しかしながら、アルミニウムのアルツハイマー病発症への効果の程度について評価するような系統立てた試みは報告はなかった。 
研究方法
アルツハイマー病を説明する仮説について、その病理過程の各々のステップに対するアルミニウムの効果を分子レベルで専門家が詳細に検討する方法を採用した。
結果と考察
100μMアルミニウムマルトールを培養液中に添加し、24時間後にAMPAで刺激した。アルミニウム非添加細胞ではグルタミン酸受容体2の細胞内移行が観察されたが、アルミニウム存在下では細胞内移行が減少していることが示された。
BACEのmRNA量及び総タンパク量、活性は、アルミニウム負荷によって変化しなかった。 アルミニウムなどの金属は生成されたAの凝集過程に変化を来たすことで、老人斑形成に影響を及ぼしていると考えられた。
アルミニウムはタウのβ結合による繊維化を阻害しアモルファス凝集を増大させることが示された。 タウを発現する細胞では50μMアルミニウムで不溶性タウの出現が観察された。CHIPを同時に発現する細胞ではアルミニウム濃度の増大とともにSDS不溶性タウの量が減少した。個体でのアルミニウムの効果について検討した。 アルミニウム高濃度投与群は肝臓に障害が見られた。脳では神経原線維変化の増大は見られなかった。
アルミニウム刺激でPS2V発現に先立ちN-myc、HMGA1aが誘導された。 また低濃度Al長期負荷群では、低酸素時に起こるPS2V発現が促進しており、さらに小胞体ストレスによる細胞死は促進していた。 
神経細胞新生に対するアルミニウムの効果の検討ではBrdU陽性細胞の数を数えた。アルミニウム投与は神経新生に直接的な影響を及ぼさない可能性が示唆された。
アルミニウム刺激ではアストロサイトはOASIS蛋白質を誘導しないため、細胞死に至ることが分った。
結論
アルツハイマー病病理過程はアミロイドβ仮説やERストレスを介したストレス応答仮説などが知られている。 今回、結果としてアルミニウムは広範な神経細胞毒性を示したが、アルツハイマー病とアルミニウムの直接的な因果関係を断定するだけの証拠は集まらなかった。
 Abeta仮説に法って考えるとアルミニウムのアルツハイマー病発症への関連は小さいと結論できる。 しかし、ERストレス経路を介してアルツハイマー病の発症に関与する可能性も軽視してはいけない。 今後、アルツハイマー病研究の進歩に伴い明らかにされていく問題であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200401258B
報告書区分
総合
研究課題名
アルミニウムなどの金属とアルツハイマー病発症機構との因果関係に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院・医学系研究科ポストゲノム疾患解析学講座プロセシング異常疾患分野(精神医学))
研究分担者(所属機関)
  • 遠山正彌(大阪大学大学院医学系研究科ポストゲノム疾患解析学講座 ・解剖第二学講座)
  • 飯塚舜介(鳥取大学医学部医学科医療環境学講座)
  • 高島明彦(理化学研究所 脳科学総合研究センターアルツハイマー病研究チーム)
  • 橋本亮太(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第3部)
  • 大河内正康(大阪大学大学院医学系研究科ポストゲノム疾患解析学講座 プロセシング異常疾患分野(精神医学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
以前よりアルミニウムを始めとする環境因子がその発症に関連する可能性を示す報告が蓄積している。しかしながら、アルミニウムのアルツハイマー病発症への効果の程度について評価するような系統立てた試みは報告はなかった。 
研究方法
アルツハイマー病を説明する仮説について、その病理過程の各々のステップに対するアルミニウムの効果を分子レベルで専門家が詳細に検討する方法を採用した。
結果と考察
(1)アルミニウムの摂取はアルミニウムがどのような形態で摂取物に含まれるかで大きく異なり、比較的大量に摂取しても尿中排泄量の増加により体内蓄積を防ぐことができる。 
(2)アルミニウムの多量の摂取は軸策輸送障害・神経発達障害の原因となり神経細胞死に至る重大な毒性の原因となることが明らかになった。
(3)神経細胞スライスを用いてシナプスの機能を検討したところアルミニウムはシナプスの重要な機能であるLTDやLTPの産生維持に障害をもたらした。
(4)アルミニウムは産生されるアミロイドベータ蛋白単量体の量やその分子種には影響を及ぼしていなかった。アルミニウムなどの金属はアミロイドベータ蛋白の単量体が神経毒性を呈するオリゴマー、プロトフィブリル形成、フィブリル形成を阻害し、βシート構造とは異なる不溶性のアモルファス蓄積物の産生を猛烈に加速していた。 
(5)アルミニウムはタウ蛋白のリン酸化を促進し、不溶性蓄積物の生成を促進したが、その蓄積物の構造はアルツハイマー病のそれとは異なりアモルファスであった。
(6)孤発性アルツハイマー病患者の脳内においてPS2Vが高頻度に発現しており小胞体ストレス脆弱性の原因となった。アルミニウムはPS2V産生機構に影響を与え、この経路を介したアルツハイマー病の発症に関与する可能性が示唆された。
結論
アルツハイマー病病理過程はアミロイドβ仮説やERストレスを介したストレス応答仮説などが知られている。 今回、結果としてアルミニウムは広範な神経細胞毒性を示したが、アルツハイマー病とアルミニウムの直接的な因果関係を断定するだけの証拠は集まらなかった。
 Abeta仮説に法って考えるとアルミニウムのアルツハイマー病発症への関連は小さいと結論できる。 しかし、ERストレス経路を介してアルツハイマー病の発症に関与する可能性も軽視してはいけない。 今後、アルツハイマー病研究の進歩に伴い明らかにされていく問題であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-