コプラナーPCBの非ダイオキシン毒性の識別によるダイオキシン耐容摂取量の設定のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200401253A
報告書区分
総括
研究課題名
コプラナーPCBの非ダイオキシン毒性の識別によるダイオキシン耐容摂取量の設定のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
遠山 千春(東京大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 秀一郎(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 加藤 善久(静岡県立大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
39,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、コプラナーPCBが有するTCDD 毒性と非 TCDD 毒性をアリール炭化水素受容体(AhR)依存性の毒性に着目し、動物実験により識別することにより、ダイオキシン類とPCBの毒性の基本的知見の充実のみならず、ダイオキシン類の耐容摂取量の設定のための情報の入手を目的としている。
研究方法
TCDDに対する感受性が異なる系統のマウス(C57Bl/6系とDBA/2系)やラットに、TCDD、コプラナーPCB異性体(PCB77、114、118、126)ならびに非TCDD様のPCBであるPCB153を曝露することによって、生殖機能、甲状腺ホルモン及びレチノイド代謝、記憶学習機能に対する影響を指標として、毒性の現れ方を検討し、TCDD毒性と非TCDD毒性とを識別することを試みた。さらに、これらの変化が生じる条件下で、DNAマイクロアレイ等を用いて遺伝子の網羅的解析を行い、また、個別遺伝子の発現解析を行った。
結果と考察
血液中甲状腺ホルモン濃度の低下など甲状腺ホルモン代謝のかく乱に関して、PCB77、118がAhRを介した反応を示すと同時に、PCB118の非TCDD作用が観察された。マイクロアレイ解析から、PCB118に特有の遺伝子発現変化(CYP2B10、CYP2CC55)が認められた。PCB126は、新生仔マウスの精巣培養系、ラットにおけるオペラント行動による記憶学習機能に対して、非TCDD作用がある可能性が示唆された。また、対照として用いた非コプラナーPCBのPCB153は、記憶・学習機能阻害や甲状腺ホルモン恒常性かく乱、泌尿器複合体における遺伝子発現などに、AhRを介さずに作用する可能性が示唆された。
結論
今回検討したコプラナーPCB異性体(PCB77, PCB114, PCB118)ならびに非コプラナーPCBであるPCB153の生体への作用には、非TCDD毒性が存在すること、さらに、AhRを介さない新たな遺伝子応答系のメカニズムの存在が示唆された。非TCDD毒性作用について、TEF値の改訂を含む今後の検討のためのデータの提供ができた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200401253B
報告書区分
総合
研究課題名
コプラナーPCBの非ダイオキシン毒性の識別によるダイオキシン耐容摂取量の設定のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
遠山 千春(東京大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 善久(静岡県立大学 薬学部)
  • 前田 秀一郎(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
  • 宮本 薫(福井医科大学)
  • 山本 雅之(筑波大学 TARAセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コプラナーPCBは、2,3,7,8四塩素化ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD) 毒性と非 TCDD 毒性を有するとの前提で、アリール炭化水素受容体(AhR)依存性であるTCDD毒性に対する感受性が異なる系統のラットやマウスを用いて、これらを識別する。そして、ダイオキシンの相対的毒性強度(REP)から総合的に判断された指標である毒性等価係数(TEF)の見直しに関する毒性影響データを取得し、耐容摂取量の設定の基本データを得ることが最終目的である。
研究方法
TCDD、ならびにPCB153(非コプラナーPCB)を、AhR依存性毒性と非依存性毒性の対照物質として用いた。コプラナーPCBとして、PCB77(TEF=0.0001)、 PCB114(TEF=0.0005)、 PCB118(TEF=0.0001)、 PCB126(TEF=0.1)、PCB169(TEF=0.01)を用いた。これらをラットやマウスに投与し、in vivoでの生体作用を、雄性生殖器官の発達、記憶学習機能、甲状腺ホルモン及びレチノイド代謝、免疫機能へ影響の観点から検討した。特定の反応が観察された条件で、DNAマイクロアレイによる遺伝子の網羅的解析、さらには個別遺伝子の発現のリアルタイムRT-PCRなどによる解析をした。非TCDD毒性を検出するための方法論の検討も行った。
結果と考察
PCB77やPCB118に曝露したマウスにおいて、血液中甲状腺ホルモン濃度の低下などの影響の面で、AhR非依存性の作用が観察された。また、PCB153に曝露したマウスやラットにおいて、記憶学習機能の変化、雄性生殖器(泌尿生殖洞)、肝臓中の遺伝子発現の変化が観察された。一部の変化はコプラナーPCB異性体による変化と共通しており、これらが非TCDD毒性AhR非依存性の影響を示す可能性が示唆された。PCB126の記憶学習機能の一部で非TCDD毒性を含む可能性や、PCB169の免疫機能抑制作用が、現在のTEF値よりは弱いことが示唆された。
結論
 コプラナーPCB異性体の毒性の相対強度を示すREP値は、それぞれの生体影響指標に基づき再検討の必要がある。特に、甲状腺ホルモン・レチノイド代謝や記憶学習機能の面で、コプラナーPCBが有する非TCDD毒性が明らかとなった。また、非コプラナーPCBと共通の遺伝子変化を通した作用メカニズムの存在の可能性も示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-