文献情報
文献番号
200401250A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類汚染に起因する悪性新生物死亡の超過リスクに関するコホート研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
丹後 俊郎(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究分担者(所属機関)
- 藤田 利治(国立保健医療科学院 疫学部)
- 谷畑 健生(国立保健医療科学院 疫学部)
- 簑輪 眞澄(国立保健医療科学院 疫学部)
- 国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
- 内山 巌雄(京都大学 工学部)
- 田中 勝(岡山大学 環境理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
23,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、有効な施策のための的確な情報を提供するため、全国の焼却施設の中から排出量の多い中規模以上の焼却施設を選び、その周辺における住民への影響、特にダイオキシン類の健康影響として悪性新生物死亡への超過リスクを人口動態死亡票を利用した日本で初めての大規模後ろ向きコホート研究により解明することを目的とする。
研究方法
(1)施設周辺地域の土壌中ダイオキシン類濃度の測定 (2)近傍湖底における湖沼底質年代測定調査を継続、前年度までに目的外使用の申請で入手した悪性新生物死亡(13死因)データ(1980年から2000年までの過去21年間のごみ焼却施設51施設周辺地域920市町村)と検討されてきた超過死亡を評価する統計モデルを使用(3)悪性新生物死亡の超過リスクに関する総合解析。
結果と考察
(1)選定された施設から半径5km円内の20地点の土壌を測定した結果、ダイオキシン類の平均値は12pg-TEQ/g、範囲は1.4-110pg-TEQ/gであった。 (2)あるごみ焼却施設(稼動開始は1992年4月)の近傍にある湖底を選んで調査した。年代別ダイオキシン類濃度の測定結果は、1976年で49pg-TEQ/g、その後、緩やかに上昇し、1991年に71pg-TEQ/g、1994年には140pg-TEQ/gと大幅に上昇したが、それ以降の変化は少なかった。 (3)推定された51施設の超過リスクの推定値を変量効果モデルのメタアナリシスにより全国の超過リスクを推定した。結果は、全悪性新生物13死因すべてにおいて、有意な超過リスクは検出されなかった。
結論
ごみ焼却施設周辺のダイオキシン類濃度レベルはさほど高くないものの、施設からの距離とダイオキシン類濃度との関係にはわずかながらも距離減衰が認められたことは、ダイオキシン類濃度がごみ焼却施設周辺ではバックグラウンド地域と比較して、僅かであるが高いことが示唆された。また、ごみ焼却施設の稼動開始時期と連動して年代別ダイオキシン類濃度が大幅に上昇した結果は、ごみ焼却施設の影響が示唆された。これらのハイリスク想定地域において悪性新生物13死因すべてに統計学的に有意な超過リスクが観察されなかったという結果は、少なくとも現時点ではという条件付であるものの、緊急な対策を要するほどの健康影響は観察されなかったと推定できる。
公開日・更新日
公開日
2005-04-01
更新日
-