ダイオキシン類等による胎児期曝露が幼児の発達に及ぼす影響の前向きコホート疫学

文献情報

文献番号
200401247A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類等による胎児期曝露が幼児の発達に及ぼす影響の前向きコホート疫学
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 洋(東北大学医学系研究科環境保健医学)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 徹(東北大学教育学研究科発達障害学)
  • 岡村 州博(東北大学医学系研究科周産期医学)
  • 村田 勝敬(秋田大学医学部環境保健学)
  • 堺 武男(宮城県立こども病院)
  • 斉藤 善則(宮城県保健環境センター)
  • 仲井 邦彦(東北大学医学系研究科環境保健学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
59,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類、PCBs、メチル水銀など環境由来化学物質の周産期曝露に起因した健康影響が危惧されている。その健康リスクを評価するため、周産期における化学物質曝露をモニタリングするとともに、出生児の成長、とくに認知行動面の発達を追跡する前向きコホート調査を実施した。
研究方法
2001年1月から2003年9月に渡り、仙台市内にてインフォームドコンセントを実施し出生児の登録を行った。児の成長を追跡するため新生児行動評価(NBAS、生後3日目)、新版K式発達検査、Bayley Scale of Infant Development(BSID)およびFagan Test of Infant Intelligence(以上、生後7ヶ月)を終了し、本年度は生後18ヶ月(新版K式発達検査とBSID)、生後30ヶ月(Child Behavior Checklist)、生後42ヶ月(Kaufman Assessment Battery for Childrenなど)を実施した。生体試料の化学分析について、母親毛髪総水銀と甲状腺ホルモン類を分析するとともに、ダイオキシン類およびPCBs全異性体分析をGC/MSにより進めた。母親の魚摂取量は出産後に実施した食物摂取頻度調査より計算した。交絡要因として育児環境、社会経済的環境、母親IQを考え調査を実施した。
結果と考察
臍帯血ダイオキシン類およびPCBsのGC/MS分析はまだ未完了である。これらの化学物質が主に魚を介して摂取されることから、代替指標として母親魚介類摂取量を用いて、NBASとの関連性を重回帰分析により解析した。母親の総魚介類摂取量および背の青い魚の摂取量は、それぞれNBASの運動クラスターおよび原始反射クラスターとの間に相関性が観察され、母親の魚摂取が出生児の状態の向上と関連することが示された。一方、母親毛髪総水銀は運動クラスターと負に相関する傾向が観察され、メチル水銀摂取の負の効果が伺われた。
結論
599名の新生児を登録し、追跡調査でも出席率は概ね82-88%で推移しており、疫学研究として妥当なサイズのフィールドを確保できた。ダイオキシン類およびPCBsといった化学物質は主に魚食を介して取り込まれるが、母親の魚摂取量が増加すると出生児のNBASのスコアが良くなり、魚の栄養学的なbenefitが示唆された。その一方でメチル水銀曝露の負の影響も示唆され、魚摂取のriskも危惧される結果となった。今後い、化学分析を進めるとともに、児の成長を追跡し検証することが必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-