化学物質によるヒト生殖・次世代影響の解明と内分泌かく乱作用検出のための新たなバイオマーカーの開発

文献情報

文献番号
200401245A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質によるヒト生殖・次世代影響の解明と内分泌かく乱作用検出のための新たなバイオマーカーの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
那須 民江(名古屋大学大学院(医学系研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 上島 通浩(名古屋大学大学院(医学系研究科))
  • 市原 学(名古屋大学大学院(医学系研究科))
  • 柴田 英治(愛知医科大学(医学部))
  • 山野 優子(昭和大学(医学部))
  • 高木 健次(名古屋大学大学院(医学系研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
15,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、内分泌かく乱化学物質などヒトの生殖機能や次世代への影響が疑われる化学物質に関して、暴露量が多い職域や中毒集団において一般集団のリスク評価に有効な情報を得ること、また、従来からの生殖・次世代影響の指標に加え、新しいバイオマーカー候補の検討を行うことである。
研究方法
前年度に引き続き、殺虫剤、有機溶剤、有機スズ化合物について横断研究を実施した。殺虫剤に関しては、2つの職域で暴露、影響、感受性のバイオマーカー候補を検討した。また、ジクロルボス(DDVP)投与ラットで暴露指標と精子指標との関連を検討した。有機溶剤については、不妊外来受診女性を対象に有害因子暴露職歴を調査した。有機スズ化合物については、中毒を発症した地域集団を対象とし、血中性ホルモン、甲状腺ホルモンの測定を行った。
結果と考察
殺虫剤製造職域の調査では、暴露群、非暴露群で尿中及び血中代謝物、血中性ホルモン濃度に有意な差は見られなかった。神経系検査所見から、神経影響が生じない労働衛生管理により生殖次世代影響は生じないと考えられた。精子塗末標本のクレアチンキナーゼ免疫染色により、未熟な精子の頭部が染色された。別の有機リン剤を扱う職域では、4種類の尿中ジアルキルリン酸(DAP)を測定した。また、白血球中8-OHdGがパラオキソナーゼ1多型と関連する傾向がみられた。DDVP投与ラットでは運動精子率が不明瞭な量反応関係で低下したが、ヒト一般生活者集団ではDDVP暴露単独での精巣へのリスクは無視できると考えられる。有機溶剤については、排卵障害に限ってのリスク上昇はみられなかったが、重症度の高い不妊と暴露との関係はさらに検討が必要である。トリメチルスズ元中毒患者群と対照群との間に血中性ホルモン、甲状腺ホルモン濃度の有意差を認めなかったが、腱反射や神経系自覚症状には暴露に伴う差を認めた。
結論
殺虫剤及びトリメチルスズに関しては、暴露を原因とする顕性の生殖次世代影響は検出されず、後者の急性中毒快復後の生殖機能への影響の可能性は神経系に比べ十分小さい。バイオマーカーに関しては、尿中DAPは有機リン剤の感度の高い暴露マーカーであり、精子クレアチンキナーゼは、精子形態を補完する影響バイオマーカーとなる可能性がある。PON1は有機リン剤の有効な感受性マーカーである可能性があるが、生殖影響のマーカーとなりうるかについてはさらに検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200401245B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質によるヒト生殖・次世代影響の解明と内分泌かく乱作用検出のための新たなバイオマーカーの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
那須 民江(名古屋大学大学院(医学系研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 上島 通浩(名古屋大学大学院(医学系研究科))
  • 市原 学(名古屋大学大学院(医学系研究科))
  • 柴田 英治(愛知医科大学(医学部))
  • 山野 優子(昭和大学(医学部))
  • 高木 健次(名古屋大学大学院(医学系研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、内分泌かく乱化学物質などヒトの生殖機能や次世代への影響が疑われる化学物質に関して、暴露量が多い職域や中毒集団において一般集団のリスク評価に有効な情報を得ること、また、従来からの生殖・次世代影響の指標に加え、新しいバイオマーカー候補の検討を行うことである。
研究方法
殺虫剤、有機溶剤、有機スズ化合物を検討の対象とした。横断研究を職域で実施し暴露評価と生殖機能評価を行ったが、有機溶剤については不妊外来受診女性の暴露職歴の調査、有機スズ化合物については中毒を発症した地域集団で調査を実施し、必要に応じて予備的な実験的検討も行った。
結果と考察
殺虫剤製造職域の調査では、暴露群、非暴露群間で尿中及び血中代謝物、血中性ホルモン濃度の有意差や暴露群での子の男女性比の低下は見られなかった。自覚症状や神経系検査所見とあわせ、神経影響が生じない労働衛生管理により生殖次世代影響は生じないと考えられる。なお、精子塗末標本のクレアチンキナーゼ免疫染色により、未熟な精子の頭部が染色された。有機リン剤を扱う別の職域では、4種類の尿中ジアルキルリン酸(DAP)の高感度迅速測定法を開発し、非暴露集団の尿中DAP濃度の検出が可能であった。尿中8-OHdGレベルは尿中DAP濃度と正の相関性を示した。パラオキソナーゼ1の多型は白血球中8-OHdGと関連する傾向がみられた。ヒト及び動物実験で得られたアセチルコリンエステラーゼ活性、尿中DAP量と運動精子率より、一般生活者集団ではDDVP暴露単独による精巣障害のリスクは無視できると考えられる。有機溶剤については、排卵障害に限ってのリスク上昇はみられなかったが、重症度の高い不妊と暴露との関係はさらに検討が必要である。トリメチルスズは実験的にステロイドホルモン合成に影響を与える可能性が示されたが、元中毒患者群と対照群との間に血中性ホルモン、甲状腺ホルモン濃度の有意差を認めず、一方、神経系の自覚症状や腱反射には差を認めた。
結論
殺虫剤に関して、調査した職域では暴露によることが明白な顕性の生殖次世代影響は検出されなかった。トリメチルスズの急性中毒快復後には、生殖への影響の可能性は神経系に比べ十分小さい。バイオマーカーに関して、尿中DAPは有機リン剤の感度の高い暴露マーカーであり、クレアチンキナーゼ免疫染色で染まる精子は、精子形態を補完する影響バイオマーカーとなる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-