前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明

文献情報

文献番号
200401243A
報告書区分
総括
研究課題名
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科(予防医学講座公衆衛生分野))
研究分担者(所属機関)
  • 水上 尚典(北海道大学大学院医学研究科(生殖・発達医学講座産科・生殖医学分野))
  • 遠藤 俊明(札幌医科大学(産婦人科学講座))
  • 石川 睦男(旭川医科大学(産婦人科学講座))
  • 櫻木 範明(北海道大学大学院医学研究科(生殖・発達医学講座婦人科学分野))
  • 野々村 克也(北海道大学大学院医学研究科(外科治療学講座腎泌尿器外科学分野))
  • 藤田 正一(北海道大学大学院獣医学研究科(環境獣医科学講座毒性学分野))
  • 中澤 裕之(星薬科大学(薬品分析化学講座))
  • 飯田 隆雄(福岡県保健環境研究所)
  • 佐田 文宏(北海道大学大学院医学研究科(予防医学講座公衆衛生学分野))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
77,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内分泌かく乱化学物質の多くは、次世代影響が大きいのが特徴である。本研究では、尿道下裂、停留精巣等の先天異常の疫学研究をpopulation-basedで行い、リスク要因と発生率の増加の有無を検討する。
研究方法
北海道の40産科施設の協力を得て、妊婦を対象に前向きコホートを設定し、55マーカーの先天異常モニタリング、PCB・ダイオキシン類、有機フッ素系化合物の曝露量の測定、それらに関連の深い代謝酵素の遺伝子多型を解析し、リスク評価を行う。併せて症例対照研究も行なう。
結果と考察
平成17年1月までの参加妊婦数は6508人であった。新生児個票の戻った1923人中、先天性心疾患11人、水頭症、停留精巣、多指症各3人、口蓋裂、水腎症、多趾症、ダウン症候群、臍帯ヘルニア各2人等で、尿道下裂は1名のみであった。出産を終えた妊婦532人の妊娠12週時の葉酸値の平均値は7.3±2.6ng/mlであった。葉酸値が5.7ng/ml以下であると出生時体重との間に負の関連がみられた。また、非喫煙群の児と比べて、喫煙群の児は、身長、体重ともに有意に小さかった。尿道下裂の症例対照研究では、母親の異物代謝酵素遺伝子CYP1A1の変異型アリルを少なくとも1つ持つ場合、野生型と比較して、児の尿道下裂に対して有意なオッズ比の減少を示した。停留精巣の症例対照研究では、異常分娩、妊娠初期・妊娠中の父の職業性ディーゼル暴露、喫煙でオッズ比の上昇がみられた。不育症の症例対照研究では、GSTM1欠損型、IL6野生型、CYP17変異型でリスクの上昇がみられ、CYP1A2変異型では、カフェイン摂取量に依存して、リスクの上昇がみられた。有機フッ素系化合物PFOSは母体血-臍帯血で有意な正相関がみられ、胎盤から胎児に比例的に移行することが明らかになった。初産婦96名及び経産婦103名の血中ダイオキシン類平均濃度は、それぞれ、20.21 pg-TEQ/g lipid及び17.52 pg-TEQ/g lipidであった。
結論
妊婦532人の妊娠12週時の葉酸値の平均値は7.3±2.6ng/mlで、葉酸値が5.7ng/ml以下であると出生時体重との間に負の関連がみられ、喫煙群の児の発育は有意に小さかった。妊婦のダイオキシン類、有機フッ素系化合物の曝露状況が明らかになった。今後も前向き研究を継続し、尿道下裂や停留精巣などの先天異常や子どもの発達など次世代影響と内分泌かく乱化学物質などの関係、遺伝的な感受性素因などについての疫学的な検討でリスク評価を進めることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200401243B
報告書区分
総合
研究課題名
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科(予防医学講座公衆衛生分野))
研究分担者(所属機関)
  • 水上 尚典(北海道大学大学院医学研究科(生殖・発達医学講座産科・生殖医学分野))
  • 工藤 隆一(札幌医科大学(産婦人科学講座))
  • 遠藤 俊明(札幌医科大学(産婦人科学講座))
  • 石川 睦男(旭川医科大学(産婦人科学講座))
  • 櫻木 範明(北海道大学大学院医学研究科(生殖・発達医学講座婦人科学分野))
  • 小柳 知彦(北海道大学大学院医学研究科(外科治療学講座腎泌尿器外科学分野))
  • 野々村 克也(北海道大学大学院医学研究科(外科治療学講座腎泌尿器外科学分野))
  • 藤田 正一(北海道大学大学院獣医学研究科(環境獣医科学講座毒性学分野))
  • 中澤 裕之(星薬科大学(薬品分析化学講座))
  • 飯田 隆雄(福岡県保健環境研究所)
  • 佐田 文宏(北海道大学大学院医学研究科(予防医学講座公衆衛生学分野))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
尿道下裂、停留精巣等の先天異常の疫学研究をpopulation-basedで行い、リスク要因と発生率の増加の有無を検討する。
研究方法
北海道の40産科施設の協力を得て、妊婦約7000人を対象に前向きコホートを設定し、55マーカーの先天異常モニタリング、PCB・ダイオキシン類、有機フッ素系化合物の曝露量の測定、それらに関連の深い代謝酵素の遺伝子多型を解析し、リスク評価を行う。併せて症例対照研究も行なう。
結果と考察
平成17年1月までの参加妊婦数は6508人であった。新生児個票の戻った1923人中、先天性心疾患11人、水頭症、停留精巣、多指症各3人、口蓋裂、水腎症、多趾症、ダウン症候群、臍帯ヘルニア各2人で、尿道下裂は1名のみであった。
出産を終えた妊婦532人の妊娠12週時の血中葉酸値の平均値は7.3±2.6ng/mlであった。葉酸値が5.7ng/ml以下であると出生時体重との間に負の関連がみられた。また、非喫煙群の児と比べて、喫煙群の児は、身長、体重ともに有意に小さかった。
尿道下裂の症例対照研究では、母親の異物代謝酵素遺伝子CYP1A1の変異型アリルを少なくとも1つ持つ場合、野生型と比較して、児の尿道下裂に対して有意なオッズ比の減少を示し、出生時低体重、帝王切開による出生で、リスクの上昇がみられた。停留精巣の症例対照研究では、異常分娩、妊娠初期・妊娠中の父の職業性ディーゼル暴露、喫煙でオッズ比の上昇がみられた。不育症の症例対照研究では、GSTM1欠損型、IL6野生型、CYP17変異型でリスクの上昇がみられ、CYP1A2変異型では、カフェイン摂取量に依存して、リスクの上昇がみられた。有機フッ素系化合物PFOSは母体血-臍帯血で有意な正相関がみられ、胎盤から胎児に比例的に移行することが明らかになり、母体血からは全例検出された。初産婦96名及び経産婦103名の血中ダイオキシン類平均濃度は、それぞれ、20.21 pg-TEQ/g lipid及び17.52 pg-TEQ/g lipidであった。
結論
本研究では妊娠初期の妊婦の葉酸摂取状況、ダイオキシン類、有機フッ素系化合物の曝露状況を明らかにした。今後も前向き研究を継続し、尿道下裂や停留精巣などの先天異常や子どもの発達など次世代影響と化学物質などとの関係、遺伝的な感受性素因などについての疫学的な検討でリスク評価を進めることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
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