内分泌かく乱物質・ダイオキシン類の小児、成人の汚染実態及び暴露に関する調査研究

文献情報

文献番号
200401240A
報告書区分
総括
研究課題名
内分泌かく乱物質・ダイオキシン類の小児、成人の汚染実態及び暴露に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山田 健人(慶應義塾大学(医学部病理学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 昌(東京農業大学応用生物科学部)
  • 飯田隆雄(福岡県保健環境研究所生活化学課)
  • 田辺信介(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
18,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の各臓器における内分泌かく乱物質の暴露状況を把握し、特定の疾患や病態と蓄積の相関関係を得るための基礎データとすることを目的とする。
研究方法
インフォームドコンセントのもとに病理解剖症例の主要臓器(脂肪組織、下垂体、脳、肝、脾、腎、膵、胃粘膜、上行結腸粘膜、乳腺、骨髄)、血液、胆汁を採取し、内分泌撹乱物質(PCB、ダイオキシン類、有機塩素系化合物等)を測定した。
結果と考察
同一症例における血液、肝、胆汁中の濃度の測定から、血液と胆汁での濃度がよく相関すること、肝では脂肪重量あたりの濃度が血液、胆汁よりも高いこと、が明らかとなった。また異性体により胆汁からの排泄に差異が認められた。腎臓、膵臓、脾臓では、それぞれ138, 163, 113 pg/g脂肪(平均値TEQ)の蓄積が認められ、同族体ごとの蓄積パターンは他の臓器と同様であった。中枢神経および乳腺中のダイオキシン類は、中枢神経では肝より低いレベル、乳腺では脂肪組織と同レベルで蓄積していた。また臭素系ダイオキシンについて測定を開始し、血液、胆汁での濃度を明らかにした。PBDE異性体のうち、#47, #153の濃度が高く全体の70%を占めた。また血液と胆汁の濃度の相関および血液と肝での濃度に相関が認められ、ダイオキシン類と同様にPBDEも胆汁からの排泄のあることが明らかとなった。一方、少量の組織からの抽出の簡便化・迅速化を目的に、新たなダイオキシン類の迅速な抽出方法を検討し、様々な臓器において至適化を行った。また東京近郊在住の人における蓄積状況と比較する目的で、愛媛在住の人についてその剖検例の肝臓および脂肪組織(10症例)を測定した。TEQ濃度は、東京近郊在住の人と同等であったが、異性体別でみると1,2,3,6,7,8-H6CDDの濃度が高かった。なお、この結果は愛媛県での母乳調査と同様の傾向であった。
結論
日本人における内分泌撹乱物質暴露状況を明らかにした。東京近郊あるいは愛媛県在住の患者の、いずれにおいても一定の内分泌撹乱物質の暴露が認められたが、いずれも濃度的にはただちに危険といえる量ではなかった。しかし、多種類の化学物質の複合的な影響を推測すると、日本人における化学物質の暴露実態調査は、今後とも継続する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200401240B
報告書区分
総合
研究課題名
内分泌かく乱物質・ダイオキシン類の小児、成人の汚染実態及び暴露に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山田 健人(慶應義塾大学(医学部病理学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 昌(東京農業大学応用生物科学部)
  • 飯田 隆雄(福岡県保健環境研究所生活化学課)
  • 田辺 信介(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン等の化学物質が、日本人にどのように蓄積しているかを明らかにし、その蓄積が臓器等の機能や疾患に与える影響を評価することを目的とする。
研究方法
インフォームドコンセントのもとに病理解剖症例の主要臓器(脂肪組織、下垂体、脳、肝、脾、腎、膵、胃粘膜、上行結腸粘膜、乳腺、骨髄)、血液、胆汁を採取し、臨床データ、病理解剖診断とともに計252症例をファイリングした。その各臓器についてPCB、ダイオキシン類(臭素系を含む)、有機塩素系化合物等を測定した。
結果と考察
のべ108例における化学物質の蓄積状況を、脂肪組織、肝、血液、胆汁、中枢神経、乳腺、腎、脾、膵、肺、副腎について測定した。その結果、日本人における暴露のバックグラウンドレベルが判明し、各臓器での加齢との相関関係や腸肝循環の実態を明らかとなった。また同一症例において血液、肝、胆汁での濃度を測定できたことから、これらの化学物質の胆汁からの排泄の存在と体内での蓄積との関係が初めて明確になった。一方、ダイオキシン類の高い蓄積を示す膵癌症例を1例見出したため、膵癌症例について検討したが、非癌症例との比較において有意な差は見出されなかった。また東京近郊在住の人における蓄積状況と比較する目的で、愛媛在住の人についてその剖検例の肝臓および脂肪組織を測定した。その結果、両者に有意な差はなかったが、異性体別でみると1,2,3,6,7,8-H6CDDの濃度が高く、愛媛県での母乳調査と同様の傾向であった。一方、本研究で、少量のヒト組織からの抽出の簡便化・迅速化が必須であったため、新たなダイオキシン類の迅速な抽出方法を検討し、その開発に成功した。
結論
我が国における人体への化学物質の蓄積状況を明らかにし、臓器・組織内濃度分布を計測し、データベースを作製した。このデータは、将来の有害化学物質対策のための基盤となるものと考える。現時点で、東京近郊あるいは愛媛県在住の患者において、一定の内分泌撹乱物質等の暴露が認められたが、いずれも濃度的に、ただちに危険といえる量ではなかった。しかし多種類の化学物質の複合的な影響を推測すると、日本人における化学物質の暴露実態調査は、今後とも継続する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-20
更新日
-