文献情報
文献番号
200401238A
報告書区分
総括
研究課題名
水道におけるフタル酸ジ-2-エチルヘキシルの濃縮機構等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
- 安藤 正典(武蔵野大学 薬学部)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科)
- 亀井 翼(北海道大学大学院 工学研究科)
- 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
- 清塚 雅彦((財)水道技術研究センター 浄水技術部)
- 古米 弘明(東京大学大学院 工学系研究科)
- 丸山 俊朗(宮崎大学 工学部)
- 米沢 龍夫((社)日本水道協会 工務部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
浄水場におけるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)の浮上濃縮機構とその適切な除去方法、並びに、タール系樹脂塗装管からのDEHPや多環芳香族炭化水素(PAH)等の溶出特性、PAHの残留塩素との反応特性、及び、これらの反応生成物を含めたPAHのエストロゲン様作用を明らかにする。
研究方法
浄水場における浮上物質・汚泥等のDEHPによる汚染実態の調査、DEHPの浮上濃縮に関する室内実験、河川水中のDEHPの除去に関する現場実験、浄水場浮上物質・汚泥等のエストロゲン様作用の評価試験、水道用タール系樹脂塗装管を用いた連続通水実験と溶出試験、水中でのPAHと残留塩素との反応実験、及び、塩素反応生成物等のAhレセプター結合活性の評価試験を行った。
結果と考察
水道原水中のDEHPは浄水処理によって概ね除去されるが、その多くは浮上物質や汚泥に高濃度に蓄積され、濃度としては浮上物質の方が高いが量としては大部分が汚泥に移行していた。DEHPの浮上濃縮には凝集剤の存在が深く関わっていた。また、空気自給式泡沫発生装置を用いることによって、DEHPを水中から効率的に濃縮・分離できた。浄水場における大気から水道水へのDEHP等フタル酸エステル類の負荷は小さかった。浄水場の汚泥や浮上物質のエストロゲン様作用は主として17β-エストラジオールに起因しており、原水のそれに比べて非常に高かった。凝集フロックのエストロゲン様作用物質の大部分は、比較的容易に水相に回帰した。水道用タールエポキシ樹脂塗装管を用いた連続通水実験では、時間経過とともにDEHPやPAHの溶出量が低下して、20ヶ月後にはその溶出が全く認められなくなった。PAHの1種であるピレンと残留塩素との反応は1次反応であり、この反応においてピレンと反応生成物は競合し、臭化物イオン共存下におけるピレンと残留塩素との反応により、1-ブロモピレン、1,3-、1,6-及び1,8-ジブロモピレン等が生成された。
結論
水道水のDEHPによる汚染を防ぐためには、浄水処理操作を適切に行うだけでなく、汚泥や浮上物質の管理を適切に行うことが非常に重要である。また、タール系樹脂塗装管等は、現在新たには使用されていないので特に問題になることはないと考えられるが、今後、PAHによる原水汚染の可能性も含めて十分に注意しておく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2005-06-16
更新日
-