中枢神経系に影響を与える内分泌かく乱化学物質の順位付けとヒトでのリスク予測と回避法の研究

文献情報

文献番号
200401237A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢神経系に影響を与える内分泌かく乱化学物質の順位付けとヒトでのリスク予測と回避法の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
舩江 良彦(大阪市立大学大学院 医学研究科・生体機能解析学)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 昭治(大阪市立大学大学院 医学研究科・病理学)
  • 伏木 信次(京都府立医科大学大学院 医学研究科・分子病態病理学)
  • 今岡 進(関西学院大学理工学部 生命科学科・分子生物学)
  • 植田 弘師(長崎大学 医歯薬学総合研究科・分子薬理学)
  • 山野 恒一(大阪市立大学大学院 医学研究科・小児科学)
  • 吉田 徳之(大阪市立大学大学院 医学研究科・生体機能解析学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質が、内分泌系・生殖器系のみならず、神経系や免疫系にも様々な影響を与えていることが報告されている。中枢神経系への作用に関しては、行動異常や知能低下との関連性が示唆され、問題視されているにも関わらず、未だどのような化学物質がそのような作用を有するかまたその機序など不明な点が多い。本研究では、化学物質の中枢神経系への作用を予測するスクリーニング法を開発し、ヒトでのリスク予測とその機序の解明とリスク回避法を見い出すことが目的である。
研究方法
中枢神経系への影響を与える化学物質の評価法として以下に示した方法を開発した。1.リコンビナントPDI(BPA結合蛋白質)のイソメラーゼ活性に対する作用 2.PC12細胞におけるTH(チロシン水酸化酵素)発現に及ぼす作用 3.精製MAP2とチューブリンを再構成し、微小管重合反応に及ぼす作用 4.培養海馬神経細胞の樹状突起染色により突起伸展数、伸展に及ぼす作用 5.ヒト培養細胞Hep3Bの低酸素誘導性遺伝子エリスロポエチン誘導に及ぼす作用。
 またマウスを用い、BPA曝露による胎児の脳発達への影響を免疫組織化学的方法とWestern blot法にて検索した。
結果と考察
PDIのイソメラーゼ活性を測定した結果、BPA、オクチルフェノール、ノニルフェノールが強い阻害活性を示した。PC12細胞にBPAを曝露したところ、THmRNAは増加した。この方法は高感度の評価法として有用であると考えられた。MAP2依存的な微小管重合に対し、内分泌かく乱化学物質が重合促進作用、重合抑制作用、重合拮抗阻害作用を示した。
 胎生初期からの低用量BPA曝露により、発生期終脳における神経発生関連遺伝子の変動が見られた。BPAは高用量でも中枢神経系腫瘍発生に対して促進作用を示さなかった。
結論
PDIのイソメラーゼ活性、PC12細胞でのTH生成促進作用、MAP2依存的な微小管重合に対する作用を検討することによって、内分泌かく乱化学物質と考えられる化学物質の中枢神経系への作用を評価できると考えられる。
 またBPAなどは、胎児性に曝露されることによって、発生期終脳における神経発生関連遺伝子の変動がみられたことからBPAの中枢神経系に影響を与えることが確認された。そしてBPAは中枢神経系腫瘍発生には影響はないことが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2005-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200401237B
報告書区分
総合
研究課題名
中枢神経系に影響を与える内分泌かく乱化学物質の順位付けとヒトでのリスク予測と回避法の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
舩江 良彦(大阪市立大学大学院 医学研究科・生体機能解析学)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 昭治(大阪市立大学大学院 医学研究科・病理学)
  • 伏木 信次(京都府立医科大学大学院 医学研究科・分子病態病理学)
  • 今岡 進(関西学院大学理工学部 生命科学科・分子生物学)
  • 植田 弘師(長崎大学 医歯薬学総合研究科・分子薬理学)
  • 山野 恒一(大阪市立大学大学院 医学研究科・小児科学)
  • 吉田 徳之(大阪市立大学大学院 医学研究科・生体機能解析学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質が、生殖器系のみならず、神経系や免疫系にも様々な影響を与えていることが報告されている。中枢神経系への作用に関しては、行動異常や知能低下との関連性が示唆され、現在問題視されているにも関わらず、未だどのような化学物質がそのような作用を有するか、またその機序など不明な点が多い。本研究では、内分泌かく乱化学物質と疑われている化合物の中枢神経系への作用を予測するスクリーニング法を開発し、ヒトでのリスク予測とその機序の解明とリスク回避法を見い出すことが目的である。
研究方法
1.ビスフェノールA(BPA)の結合蛋白質(PDI)をラット脳からBPAをリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーにて精製した。
2.中枢神経系へ影響を与える化学物質の評価法。リコンビナントPDIに対する結合実験またそのイソメラーゼ活性に対する作用。PC12細胞にて、ドパミンの分泌およびTH(チロシン水酸化酵素)の発現に対する作用。微小管結合蛋白質およびG蛋白質連関型受容体に及ぼす影響。アフリカツメガエルおよびヒト肝癌細胞を用いた方法。
3.BPAの中枢神経系への作用はBPA曝露されたラット胎仔脳の病理組織学的方法および遺伝子発現変動を検索することによって行った。
結果と考察
BPAの結合タンパク質をラット脳より精製したところ、それは、protein disulfide isomerase(PDI)と同定された。PDIは甲状腺ホルモンのリザーバーとして知られていることから、BPAは甲状腺ホルモンかく乱がその作用であると考えられた。そこで、甲状腺ホルモンかく乱作用を有するかどうか評価する方法として、PDIに対する結合実験やその他PDIのイソメラーゼ活性に対する作用を測定する方法を開発した。 
またPC12細胞からのドパミン分泌作用やTH発現に対する作用を測定する評価法を開発した。その結果、BPAやノニルフェノールは中枢神経系へ影響を与える可能性が示唆された。
BPA曝露によって、終脳において神経発生に関わる数種の遺伝子発現の変動を惹起するとともにPDI発現の増強がみられた。
結論
BPAによる中枢神経系への作用は、甲状腺ホルモン作用をかく乱することによって発生すると考えられる。脳発達時に中枢神経系に影響を与える化学物質をスクリーニングする方法を開発した。これらの方法はヒトでも有効であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-16
更新日
-