薬物乱用・依存の実態とその社会的影響・対策に関する研究

文献情報

文献番号
200401218A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存の実態とその社会的影響・対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
和田 清(国立精神・神経センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 茂(国立精神・神経センタ- 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 庄司正実(目白大学 人間社会学部)
  • 相星淳一(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)
  • 森田展彰(筑波大学 社会医学系)
  • 妹尾栄一(東京都精神医学総合研究所 社会病理部門)
  • 池上直己(慶應義塾大学 医学部)
  • 阿部惠一郎(創価大学 教育学部)
  • 宮永 耕(東海大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
19,790,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物乱用・依存対策の立案・評価のための基礎資料に資するために、薬物乱用・依存の実態を把握し(研究1)、同時に、薬物乱用・依存が及ぼす社会的影響とその対策について検討(研究2)した。
研究方法
<研究1>①全国中学生、②全国の有床精神科医療施設、③全国の児童自立支援施設入所児、④某救命救急センターに搬送された患者、⑤ダルク利用者本人とダルク施設に対する調査を実施した。<研究2>①医療現場における取締機関との対応実態を調査し、②ケアのコストに基づく支払い方式を開発するために、タイムスタディを行なった。また、③「薬物裁判所」及び④「治療共同体」の紹介を目的に、文献研究、実地調査を実施した。
結果と考察
<研究1>①中学生の有機溶剤乱用経験率は1.1%であった。有機溶剤乱用経験者群の25%に大麻乱用の経験があり、24%に覚せい剤乱用の経験があった。中学生では、喫煙/大人が同伴しない飲酒→有機溶剤乱用→大麻・覚せい剤乱用という流れが強く示唆された。②精神障害を引き起こす原因薬物としては、覚せい剤が51%と最も多いが、初回使用薬物としては有機溶剤が45%と最も高かった。大麻、MDMAの割合が著明増加していた。③児童自立支援施設入所者での薬物乱用経験率は、有機溶剤>大麻>覚せい剤の順であった。④救命救急センター搬送患者の1.5%から覚せい剤が検出された。⑤入寮型ダルクでは、77%の利用者で薬物再使用が止まっていた。<研究2>①警察が関与した覚せい剤精神病患者の診察に関して、警察による事前採尿の実施要望が最も多かった。②入院後のケア時間の変化パターンは3つに類型化できた。支払い方式を開発する際には、急性期の変化パターンにも留意する必要があると考えられた。③薬物裁判所の特徴は,薬物事犯者に対する裁判所による治療的処遇の供給とプログラム履行に対する監督と言える。④「治療共同体」の成果は、費用対効果の面からも認められており、近年、司法機関との連携が各地で進んでいた。
結論
わが国の薬物乱用状況は、調査年毎に悪化の傾向を辿ってきたが、2003~2004年で、初めて、改善を伺わせる結果であった。また、「薬物裁判所」、「治療共同体」は二次予防(早期発見・早期治療)・三次予防(薬物依存からの回復と社会復帰)の立ち後れているわが国には、非常に参考になるシステム、社会資源であり、特に、「治療共同体」の設置が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200401218B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物乱用・依存の実態とその社会的影響・対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
和田 清(国立精神・神経センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 茂(国立精神・神経センタ- 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 庄司正実(目白大学 人間社会学部)
  • 相星淳一(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)
  • 森田展彰(筑波大学 社会医学系)
  • 妹尾栄一(東京都精神医学総合研究所 社会病理部門)
  • 阿部惠一郎(創価大学 教育学部)
  • 宮永 耕(東海大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物乱用・依存対策の基礎資料に資するために、薬物乱用・依存の実態を把握し(研究1)、同時に、薬物乱用・依存が及ぼす社会的影響とその対策について検討(研究2)した。
研究方法
[研究1]①-1 15歳以上の全国の住民、①-2 全国中学生、②全国の有床精神科医療施設、③全国の児童自立支援施設入所児、④某救命救急センターに搬送された患者、⑤ダルク利用者本人と施設に対する調査を実施した。[研究2]①医療施設における警察との対応実態を調査し、②ケアのコストに基づく支払い方式を開発するために、タイムスタディを行なった。③薬物裁判所及び④治療共同体の紹介を目的に、文献・実地調査を実施した。
結果と考察
[研究1]①-1 違法薬物の生涯経験率は、有機溶剤(1.7%)、大麻(0.5%)、覚せい剤(0.4%)、コカイン(0.1%)、ヘロイン(統計誤差内)であった。いずれかの薬物に関する生涯経験率は2.2%で、減少傾向を示していた。①-2 中学生の有機溶剤乱用経験率は1.1%であったが、経験者群の25%に大麻の、24%に覚せい剤の乱用経験があった。中学生では、喫煙/大人が同伴しない飲酒→有機溶剤乱用→大麻・覚せい剤乱用という流れが強く示唆された。②精神障害惹起原因薬物としては、覚せい剤が51%と最も多いが、初回使用薬物としては有機溶剤が45%と最も高かった。大麻、MDMAの割合が著明増加していた。③児童自立支援施設入所者での薬物乱用経験率は、有機溶剤>大麻>覚せい剤の順であった。④救命救急センター搬送患者の1.5%から覚せい剤が検出された。⑤入寮型ダルクでは77%の利用者で薬物再使用が止まっていた。[研究2]①警察による診察前の採尿実施要望が最も多かった。②入院後のケア時間の変化パターンは3つに類型化できたが、これを支払い方式算出に生かす必要がある。③薬物裁判所の特徴は,薬物事犯者に対する裁判所による治療的処遇の供給とプログラム履行に対する監督と言える。④治療共同体の成果は、費用対効果の面からも認められており、近年、司法機関との連携が各地で進んでいた。
結論
薬物乱用状況は、経年的に悪化傾向を辿ってきたが、初めて、改善を伺わせる結果となった。また、「薬物裁判所」、「治療共同体」は二次予防・三次予防の立ち後れているわが国には、非常に参考になるシステム、社会資源であり、特に、「治療共同体」の設置が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-