薬物代謝酵素が関与する医薬品相互作用の添付文書等による適正な情報提供に関する研究

文献情報

文献番号
200401214A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物代謝酵素が関与する医薬品相互作用の添付文書等による適正な情報提供に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所(医薬安全科学部))
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 真二(国立医薬品食品衛生研究所(医薬安全科学部))
  • 頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所(医薬安全科学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,635,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品相互作用による有害反応等は、相互作用に関する十分な知識・情報から未然に防止することが可能である。医薬品適正使用に重要な情報は「医薬品添付文書」として提供され、科学進歩に伴い内容の適正を図る必要がある。薬物代謝酵素P450については、各分子種と医薬品の代謝・相互作用に関し多数の科学論文が発表され、SNPs等遺伝子的な解析も進みつつある中で、添付文書による情報提供が必ずしも充実しておらず、医薬関係者の適正使用を妨げる要因の一つと考えられる。本研究では、有用で使いやすい添付文書の記載内容のあり方について、医薬品相互作用の周辺研究を踏まえて検討することを目的とする。
研究方法
20種類のCa拮抗剤と他剤との薬物動態相互作用について、最新の科学的知見に基づき体系的な評価を行い、日本、米国、英国の添付文書記載状況との比較・検討した。また、公開新薬承認情報を基に、開発段階でのCYP特定試験の実施率およびその添付文書への反映状況について調査・解析を行った。さらに、添付文書中の医薬品等相互作用及び薬物動態等に関する記載内容について、320医療機関にアンケート調査を実施した。これらの結果から有用で適正な添付文書記載内容のあり方を考察し、スタチン系薬剤との薬物動態相互作用について、添付文書改定案を作成した。
結果と考察
日本のCa拮抗剤の添付文書は、薬物動態変動に関する定量的データの記載が十分でなく、特に、影響がない場合は記載がなかった。また、CYP特定試験実施率は増加していたが、CYPが関与しない場合は添付文書に反映されていなかった。アンケート調査では、現行の添付文書の記載順序、形式が支持される一方、相互作用欄に個別医薬品名、重要度、薬物動態変化率及び投与条件を追加すべきとの意見が多かった。これらを基にスタチン系薬剤の文献情報に基づき作用機序、定量的数値、追加薬剤等を相互作用の表中に加筆・修正した改定案作成を試みたが、ボリュームは殆ど増えず、表形式で簡潔に情報提供するという現在の添付文書の基本的な考え方を損なわなかった。
結論
CYPに関する情報は年々充実してきているものの、医薬品の添付文書中では、それらの情報が十分に反映されていない可能性が示された。相互作用によるリスクの評価及び回避のためには、代謝に関与する酵素名や、定量的な血中濃度の変化値などの情報を反映していく必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-07-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200401214B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物代謝酵素が関与する医薬品相互作用の添付文書等による適正な情報提供に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所(医薬安全科学部))
研究分担者(所属機関)
  • 浦野 勉(国立医薬品食品衛生研究所(医薬安全科学部))
  • 三宅 真二(国立医薬品食品衛生研究所(医薬安全科学部))
  • 頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所(医薬安全科学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品相互作用による有害反応等は、十分な知識・情報から未然に防止することが可能である。医薬品適正使用に重要な情報は「医薬品添付文書」として提供され、科学進歩に伴い内容の適正を図る必要がある。薬物代謝酵素P450については、近年、分子種、SNPs等の研究が進展しているが、添付文書による情報提供が必ずしも充実しておらず、医薬関係者の適正使用を妨げる要因の一つと考えられる。本研究では、有用で使いやすい添付文書の記載内容のあり方について、医薬品相互作用の周辺研究を踏まえて検討することを目的とする。
研究方法
医療用医薬品添付文書中に記載されているP450関連記載の調査を行った。また、柑橘ジュース類の薬物代謝への影響、スタチン系薬剤およびCa拮抗剤と他剤との相互作用について、最新の科学的知見に基づき体系的な評価を行い、国内外の添付文書情報と比較した。添付文書による有用な情報提供のあり方について医療従事者にアンケート調査を実施した。これらの調査・解析結果から、添付文書等の医薬関係者への医薬品相互作用の情報提供において、有用で適正な記載内容のあり方を統括して考察した。
結果と考察
添付文書中のCYP関連情報の記載は年次ごとに充実し、承認取得年が新しいものほど、記載が充実していることが判明した。スタチン系薬剤およびCa拮抗剤について、日本の添付文書は、文献情報から得られた薬物動態学的な変化に関する定量的データが十分に記載されていなかった。柑橘類ジュースと薬剤との相互作用については、グレープフルーツジュース摂取による臨床薬物動態への影響に関しては、36薬剤でAUC/Cmaxの増加、2剤でAUC/Cmaxの著しい減少が認められ、それぞれ小腸CYP3A4、小腸OATPの抑制によると考えられた。また、その他の柑橘ジュースも薬物動態に影響が認められた。アンケート調査では、相互作用欄に個別医薬品名、重要度、薬物動態データの変化率、投与条件について追加すべきとの意見が多かった。以上に基づきスタチン系薬剤で文献情報に基づいた相互作用記載の改訂案を作成した。
結論
CYPに関する情報は年々充実してきているものの、添付文書中では、それらの情報が十分に反映されていない可能性が示された。相互作用によるリスクの評価及び回避のためには、代謝に関与する酵素名や、定量的な血中濃度の変化値などの情報を反映していく必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-07-01
更新日
-