ヒト胚性幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200401190A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胚性幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
辻 浩一郎(東京大学(医科学研究所))
研究分担者(所属機関)
  • 河崎裕英(東京大学(医科学研究所))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血医療は、現代医学においても重要な補助医療であり、その供給は今日も多くのドナーの善意に依存している。そのため、輸血用血液の供給量の絶対的不足が社会問題となっている。更に、輸血用血液は不特定多数のドナーから採取されるため、種々の感染症の危険性についても問題となっている。そのため、大量の安全な輸血用血液の確保が強く求められている。そこで、半永久的に増殖可能なヒト胚性幹細胞(ES細胞)から輸血用血液への分化誘導法の開発を計画した。
研究方法
マウス胎仔肝から分離した細胞を付着培養し、ストローマ細胞の樹立を試みた。更に、ヒトES細胞を、樹立されたマウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養し、産生される細胞を、形態学的観察、フローサイトメトリー、コロニー形成法等により、経時的に解析した。また、形成されたコロニーに含まれる赤血球のヘモグロビンを、免疫染色により解析した。
結果と考察
1.マウス胎仔肝から分離した細胞を付着培養し、ストローマ細胞を樹立した。
2.ヒトES細胞を、樹立されたマウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養した。培養16日目頃に、培養細胞をコロニー培養すると、赤血球コロニー、顆粒球・マクロファージコロニー、種々の血液細胞を含む混合コロニーが形成され、これらのコロニーからは、赤血球、好中球、マクロファージ、巨核球などの血液細胞が産生された。産生された赤血球の中には、脱核した成熟赤血球も認められた。
3.形成されたコロニーに含まれる赤血球のほとんどが、胎児型ヘモグロビンを保持していたが、更に、70-80%の赤血球は、成人型ヘモグロビンも保持していた。これらのヘモグロビンは、酸素結合能を有していた。
4.以上の結果は、ヒトES細胞は、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養により、赤血球系前駆細胞、骨髄球系前駆細胞、複数の血液細胞に分化可能な多能性造血前駆細胞に分化誘導されたことを示している。
結論
ヒトES細胞を、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養することにより、赤血球系前駆細胞、骨髄球系前駆細胞、多能性造血前駆細胞に分化誘導できた。これらの前駆細胞から分化誘導された赤血球の一部には、脱核した成熟赤血球も認められ、酸素運搬能を有する成人型ヘモグロビンを合成していた。これらのヒトES細胞由来の成熟赤血球や好中球は、輸血医療を含めた、様々な再生医療への応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-06-22
更新日
-