幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200401189A
報告書区分
総括
研究課題名
幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 滋(東京大学医学部附属病院(無菌治療部))
研究分担者(所属機関)
  • 小川 誠司(東京大学医学部附属病院(造血再生医療講座))
  • 黒川 峰夫(東京大学医学部附属病院(血液・腫瘍内科))
  • 神田 善伸(東京大学医学部附属病院(無菌治療部))
  • 鈴木 隆浩(東京大学医学部附属病院(造血再生医療講座))
  • 熊野 恵城(東京大学医学部附属病院(血液・腫瘍内科))
  • 高橋 孝喜(東京大学医学部附属病院(輸血部))
  • 十字 猛夫(日本赤十字社血液センター)
  • 高梨 美乃子(東京都赤十字血液センター臍帯血バンク)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
57,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在血液製剤は献血事業に依存しているため、量的質的な供給の不安定性、感染の危険性などの問題を孕む。本研究では造血幹細胞の自己複製能と多分化能を利用して、体外で各血球細胞の分化・増殖による人工血液産生法の開発を行い、輸血医療を抜本的に再構築することを目指す。
研究方法
①臍帯血からCD133陽性細胞を分離し、可溶型NotchリガンドのDelta1-Fc存在下で培養後NOD/SCIDマウスに移植し、造血幹細胞を定量した。②若年マウス骨髄よりCD34陽性細胞を分離し、成熟好中球を効果的に得るための最適なサイトカイン添加条件を検討し、誘導好中球の機能を解析した。③保存容器に使用できる血小板接着基板の開発と、効率的な血小板活性化評価法の開発を行った。④研究者から提出された研究計画書等を臍帯血バンクで承認し、臍帯血が研究用と判断された時点で研究者に供給するシステムの構築と解析を行った。
結果と考察
①造血幹細胞が約6倍に増幅されることを明らかにした。無血清条件で明確な増幅が示され、臨床応用に近づいた。②1個のCD34陽性細胞から、約1700の好中球が純度90%以上で得られ、マウスより得られた血好中球に比べ良好な貧食・殺菌能を示した。①と組み合わせれば、輸血が可能なレベルの効率が得られうる。③種々の基板上に血小板を付着させて走査型電子顕微鏡により観察し、F-DLC基板が血小板吸着の少ない有望な血小板保管用医療材になり得ると考えられた。人工血小板開発と現行の血小板製剤の品質向上に寄与しうる。④受入臍帯血数641件の60.7%が保存され、うち172件は細胞数基準で移植に使えず、研究用に適していた。126件を研究用に提供し、利用率は73.3%と良好だった。
結論
臍帯血造血幹細胞を無血清・無フィーダー条件で増幅可能な培養システムを開発した。また、造血幹細胞から1700倍の増幅効率で純度の高い好中球を得る培養系も開発した。これらの技術を組み合わせ、効率の良い輸血用好中球製剤開発への寄与が期待される。
また、F-DLC膜が血小板の接着を抑制し、長期保存容器の素材として有望であることを見出した。
さらに、現在臍帯血バンクの保存基準を満たさず、本来なら廃棄処分になっている臍帯血のうち73.3%が研究用として役立っていることを示した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-