副作用の発現メカニズムを考慮した対応方策に関する研究

文献情報

文献番号
200401181A
報告書区分
総括
研究課題名
副作用の発現メカニズムを考慮した対応方策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
井上 和秀(九州大学大学院 薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 永松 信哉(杏林大学医学部(生化学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,515,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病はそれ自体が動脈硬化症を引き起こし、心・循環器系の病態も増悪し、脳梗塞や心筋梗塞の合併率が極めて高い。そこで、降圧剤による治療は特に糖尿病と高血圧症を併発している患者にとって必須であり、臨床ではカルシウム拮抗薬が広く用いられているが、本剤は膵臓β細胞にも作用して、インシュリン分泌を抑制し血糖コントロールに悪影響を及ぼしうる。本研究の目的は、上市されているカルシウム拮抗薬が膵臓β細胞からのインシュリン分泌を抑制するか否かを明らかにし、その副作用を未然に防ぐ方法を考案することである。
研究方法
Wistar ratから膵摘出後、ラ氏島から単一β細胞を採取培養した。β細胞を各種物質にて15分間刺激し、Fura-2法により、細胞内Ca2+濃度を測定した。インスリン顆粒をGFP標識するためにヒトプレプロインスリンのC末端にGFPを導入したcDNAを作製しラットβ細胞をGFP標識し単一インスリン顆粒の動態をTIRFMシステムを用いて解析した。また、膵β細胞からのインシュリン放出をRIA法で測定した。
結果と考察
臨床上頻繁に用いられているニフェジピンやIsradipineはグルコース刺激による[Ca2+]iの上昇を完全に抑制し、インスリン分泌も同様に抑制した。一方、臨床的に用いられる濃度(100nM前後)では、必ずしも明らかな抑制はみられない。現在汎用されている糖尿病治療薬のスルホニルウレア剤は、KATP-チャネルを閉じ、L型カルシウムを開くことによってインスリンの分泌を促進する。従って、カルシウム拮抗薬投薬中の高血圧併発糖尿病患者にとっては、スルホニルウレア剤は必ずしも最適の血糖降下剤とは言い難い。そこで、KATP-チャネル→L型カルシウムチャネル系の活性化を介さない様な血糖降下剤の開発が必要である。よって、本年度はATP受容体を活性化することによりインスリン分泌が活性化されるか否かについて検討し、P2Y受容体の選択的アゴニストであるADPβS、非水解型ATPγSはインスリン分泌を促進する可能性が示唆された。
結論
臨床的に用いられているカルシウム拮抗薬は、ある条件下においては、膵β細胞機能を抑制し、糖尿病治療薬であるスルホニルウレア剤の効果を阻害する。従って今までとは全く違った分子を標的とした新規糖尿病治療薬の開発が必須であり、ATP受容体の活性化がその一つの方向性を示すものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2005-07-01
更新日
-