プラスティック製医療用具の適正使用に関する研究

文献情報

文献番号
200401179A
報告書区分
総括
研究課題名
プラスティック製医療用具の適正使用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中澤 裕之(星薬科大学薬品分析化学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 章博(日本医療器材工業会)
  • 荻野 純一((株)東レリサーチセンター有機分析化学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
18,780,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)及びその代謝物,フタル酸モノ-2-エチルヘキシル(MEHP)について,最新分析機器を駆使した測定法を構築し,PVC製医療用具からの溶出挙動の解明を目的とした.製品の保存状態,滅菌処理によるDEHP等の溶出挙動の変化についても検討し,安全性評価に資する科学的データの取得を目指した.また,ポリカーボネート(PC)製三方活栓は,接続部で破損(クラック)の発生することが知られており,その発生原因等について検討した.
研究方法
PVC材質において,滅菌法の種類によるDEHP及びMEHPの溶出量変化をLC/MS/MSを用いて検討し,PVCシート中での深さ方向のDEHP存在量を加熱脱着GC-MS法で測定した.また,透過型電子顕微鏡,フーリエ変換赤外分光法,X線光電子分光法,原子間顕微鏡を利用し,各種滅菌操作によりPVC材質の表面変化を解析した.
 一方,PC製三方活栓が劣化によるクラックは,医薬品の添加剤成分,接合強度,接合回数および接合時間等の諸条件について検討し,クラック発生の原因を追究した.
結果と考察
本研究では,PVCチューブから医薬品を介してDEHPだけでなく,滅菌操作によりMEHPも溶出することが確認された.本来,DEHPが血中酵素によりMEHPに代謝されると考えられてきたが,製品自体にMEHPが含有されているか,代謝酵素以外でMEHPが生成される経路が示唆された.また,市販医療用具が施す滅菌の種類により,DEHP及びMEHP溶出量に顕著な差を生じ,PVC材質の変化が示唆され,表面解析を行ったが,材料表面に顕著な差は見られなかった.しかし,深さ方向でのDEHP存在量を測定したところ,表面付近のDEHP量が減少していることが判明した.
PC製三方活栓のクラック発生には,締め付け強度,締め直し回数,使用時間,添加剤濃度等が影響することが明らかとなった.
結論
MEHPはDEHPよりも毒性が強いことが懸念され,今後,PVC製医療用具からのDEHPやMEHPの溶出量変化を精査する必要がある.また,PC製三方活栓のクラック発生の原因を追究し,発生リスクを低減する対策が求められる.得られる研究成果は,安全性の高い医療用具の開発及び適正使用に寄与するものと期待される.

公開日・更新日

公開日
2005-07-21
更新日
-