タンパク質製剤および非ウイルス性遺伝子導入製剤の分子運動性に基づく安定性試験法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200401169A
報告書区分
総括
研究課題名
タンパク質製剤および非ウイルス性遺伝子導入製剤の分子運動性に基づく安定性試験法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 澄江(国立医薬品食品衛生研究所(薬品部第二室))
研究分担者(所属機関)
  • 米谷芳枝(星薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非ウイルス性遺伝子導入製剤としてのリポソーム製剤、及びタンパク質を対象とした凍結乾燥製剤について、分子レベルの運動性を測定し、それに基づいて製剤の安定性を効率的に予測する方法を確立する。
研究方法
①デキストラン系の添加剤を含有する凍結乾燥製剤を用いて、誘電緩和時間に反映される分子運動およびNMR緩和時間に反映される分子運動を、熱分析法によって測定される構造緩和の分子運動と比較し、安定性評価の指標としての誘電緩和時間およびNMR緩和時間の有用性を評価した。また、②デキストランゲルの網目によって形成されるナノキャビティの中にモデルタンパク質β-ガラクトシダーゼ(GA)を1分子ずつ封じ込めて分子運動性を抑制し、タンパク質の保存安定性を確保する技術の開発を目指した。さらに、③安定性の高いDNA導入製剤の開発を目指して、凍結乾燥再水和法によって調製されるリポソームへの遺伝子導入効率や安定性に及ぼす脂質組成およびショ糖の影響を検討した。
結果と考察
①NMRおよび誘電緩和が反映する分子運動はタンパク質やDNAの安定性を支配する構造緩和の分子運動より有意に短い時間軸を示したが、いずれも構造緩和の分子運動と連動していることが明らかになり、構造緩和の分子運動を直接測定していないにもかかわらず、タンパク質やDNAの凝集に繋がる分子運動の変化を検出することができ、安定性評価の指標として有用であることが分かった。また、②GAをデキストランハイドロゲルに内包することにより凍結乾燥時の失活を抑制できることが示され、ゲルの網目によって形成されるナノキャビティの中にタンパク質を1分子ずつ封じ込めることによって、タンパク質の安定化が可能であることが明らかになった。さらに、③凍結乾燥再水和調製法によるDNA封入リポソームは、凍結乾燥によってリポソーム自体の粒子径の変化や、DNAの構造変化による凝集性に大きな影響を受けることが明らかになった。
結論
熱的に不安定であるために、低温条件で膨大な時間と資源を費やす実証的な長期保存試験で評価されているタンパク質やDNA製剤の安定性が、分子運動性を指標にする方法によって予測できる可能性が示唆された。さらに、安定性を支配するタンパク質やDNAの分子運動性を制御することにより、高い安定性を有するタンパク質製剤および非ウイルス性遺伝子導入製剤の開発が有望になることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-