血液中でのプリオンタンパクの存在様式の解析と血液製剤からのプリオン除去の研究

文献情報

文献番号
200401157A
報告書区分
総括
研究課題名
血液中でのプリオンタンパクの存在様式の解析と血液製剤からのプリオン除去の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 水沢 左衛子(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
  • 永田 典代(国立感染症研究所感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
11,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プリオンの感染性を評価するために、これまでマウスやハムスタ-の脳乳剤を用いた研究がされていたが、血液中に存在するプリオンを解析するためには培養液中に感染性プリオンが分泌されるような系を確立することが必要である。本研究では in vitro感染系の確立、感染価の測定法、ウイルス除去膜による感染性プリオンの除去、及びマウスリンパ球におけるプリオン親和性サブセットの解析等を実施し、血液製剤の安全性向上を目指した。
研究方法
 昨年度の研究によってBSE由来のプリオンPrPscの感染が確認されたヒト由来細胞株を継代し、持ち込まれた牛脳乳剤の影響がなくなったと考えられる時期に感染細胞から培養液を集めた。1万Gの遠心後、0.45マイクロのフィルタ-で濾過した培養液を試験に用いた。感受性のある細胞株に希釈した培養液を感染させ、週間継代後ウエスタンブロット法によってプロテネ-スK(PK)耐性のプリオンを検出した。また、35nと20nのポアサイズのウイルス除去膜を用いて各々培養液を濾過し、得られた濾液を希釈して非感染の細胞に感染させ、週間培養後、PK耐性のプリオンを検出した。また、BSE感染白血病由来細胞株の培養液の感染性も検索した。さらに感染価を簡便に得るために感染細胞をグアニジン処理し、抗体で検出した。また、BSEを感染させたマウスの細胞株の培養液をマウスのリンパ球のサブセットに添加し、数日間培養後、細胞を凍結融解して得た液をマウスの細胞に添加、数週間培養後プリオンを検出した。
結果と考察
BSEに持続感染しているヒト及びマウスの細胞株を得ることができた。ヒト由来細胞株の培養液中に約106/mlの感染性プリオンを含むと推定された。20nのウイルス除去膜の除去効果は、最終的に認められなかったが、感染4週前後においては検出されるプリオンの量に差が認められた。これらのことから感染性プリオンは培養液中では大きさの異なる様々な凝集塊として存在していると推定された。また、BSE感染白血病由来細胞株の培養上清中にも伝達性のプリオンが存在した。リンパ球のサブセットの解析では腹腔内に存在する細胞に陽性のシグナルが得られ、プリオンが親和性を持つ可能性が示唆された。
結論
BSE由来の脳乳剤を用いてin vitro感染系を確立し、培養上清中にプリオンの伝達性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200401157B
報告書区分
総合
研究課題名
血液中でのプリオンタンパクの存在様式の解析と血液製剤からのプリオン除去の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 水沢左衛子(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
  • 永田典代(国立感染症研究所感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
英国において、輸血によるvCJD感染が強く疑われている症例が報告された。血液製剤の安全性向上のためにプリオンの血液中での存在様式の解析と除去・不活化法の研究は急務となっている。脳乳剤を用いて研究がされていたのでより血液に近いin vitroの感染系を確立し培養液中に感染性プリオンが分泌されるような系を作ることを目的とした。それに続いて、血球系細胞株のin vitro感染系の確立、感染価の測定法、ウイルス除去膜による感染性プリオンの除去、及びマウスリンパ球におけるプリオン親和性サブセットの同定等を実施し、血液製剤の安全性向上を目指した。
研究方法
日本で発症したBSE由来の牛脳乳剤を用いてヒトとマウスの細胞株に感染させた。ウエスタンブロット法で感染を確認後、1万Gの遠心後、0.45マイクロのフィルタ-で濾過した培養液を調整し、プリオンのストック液とした。感受性のある細胞株に希釈した培養液を感染させ、経時的にサンプルを集め8週間継代して感染価を測定した。また、35nと20nのポアサイズのウイルス除去膜を用いて各々培養液を濾過し、得られた濾液の感染価を測定して除去効率を評価した。また、血小板に分化傾向があるヒト白血病由来細胞株にBSE由来の牛脳乳剤を感染させ、感染の成立の有無を検索した。さらにその培養液を非感染細胞に感染させ、伝達性を解析した。また、BSEを感染させたマウスの細胞株の培養液をマウスのリンパ球のサブセットに添加し、数日間培養後、細胞を凍結融解して得た液をマウスの非感染細胞に添加、数週間培養後プリオンPrPscを検出した。
結果と考察
BSEに持続感染しているヒト及びマウスの細胞株を得ることができた。感染細胞の培養液中には感染性プリオンが存在し、非感染の細胞に伝達性が認められた。また、20nのウイルス除去膜では完全に除去できなかったが、感染4週前後において、濾過前に比較してプリオンのシグナルが減少した。これらから感染性プリオンは培養液中では大きさの異なる様々な凝集塊として存在している可能性が考えられた。また、リンパ球のサブセットの解析では腹腔内に存在する細胞に陽性のシグナルが得られ、プリオンに親和性を持つ可能性が示唆された。
結論
BSE由来の脳乳剤を用いてin vitro感染系を確立し、培養上清中での感染性プリオンの存在様式の解析とウイルス除去膜による除去実験を行った。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-