食中毒菌の薬剤耐性に関する疫学的・遺伝学的研究

文献情報

文献番号
200401146A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒菌の薬剤耐性に関する疫学的・遺伝学的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 治雄(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 宗生(独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所 安全性研究部)
  • 高橋 敏雄(農林水産省 動物医薬品検査所 検査第二部)
  • 五十君 靜信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 山口 正則(埼玉県衛生研究所 臨床微生物担当)
  • 泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「食用動物に対して抗菌薬を使用することがどの程度耐性菌を選択し、それが食物連鎖を介してヒトに伝播するのに影響を及ぼしているのか。更に、ヒトへの細菌感染症の治療を困難にする潜在的危険性を孕んでいるのか。それをどの程度予測できるのか」が国際的大命題になっている。本研究においては、その大命題に対する科学的評価を行うためのデータを得ることを目的にする。
研究方法
家畜等、肉を中心とする食品および食中毒事例から分離される薬剤耐性菌の現状及び動向について全国レベルの調査を行う。また特定農場での薬剤の使用状況、家畜から分離される菌の耐性化状況について個別追跡調査を行う。更に家畜由来株と患者由来株の関連性について分子遺伝学的および疫学的解析を駆使して、耐性遺伝子の伝播を含め検討する。
結果と考察
(1)ヒトから分離されるサルモネラの薬剤耐性率は約34%で、多剤耐性化の傾向にあることを明らかにしてきた。特にフルオロキノロン耐性サルモネラが2004年までに18例の患者から分離されており、すべてS.Typhimuriumであり、疫学的解析で汚染原因が推定できたのはペットとの関係が推定された1例のみであった。(2)牛と豚から分離されたS. Typhimurium (ST)の50%に多剤耐性を示すDT104が確認された。それらは2つの主要な遺伝子型(PFGEパターン)に分類され、一部はヒト症例株のそれと一致していた。多剤耐性S.Typhimurium DT104による散発ヒト事例の発生が増加するとともに、大阪でわが国初の集団事例も見られた。(3)フルオロキノロンに対しては、20%前後の家畜由来カンピロバクターに耐性株の出現(C. jejuniでは10%前後)が確認されたが、家畜由来C. jejuniにおいてはフルオロキノロンとマクロライドの両剤(カンピロバクター腸炎の治療薬)に耐性を示す株は認められなかった。
結論
Salmonella Typhimuriumの多剤耐性化が進んでいる。その中でフルオロキノロン耐性菌がヒト及び動物から分離されてきており、そのヒト由来株および動物由来株の間に遺伝的類似性が見いだされた。共通の起源が示唆された。Campylobacterの耐性パターンはjejuniあるいはcoliの種間でかなりの差が見られた。菌種が分布している動物が異なるので、その動物に使用されている抗菌薬の差を反映しているものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-03
更新日
-