油脂加工食品中に生成する脂質酸化物の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200401135A
報告書区分
総括
研究課題名
油脂加工食品中に生成する脂質酸化物の安全性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
和田 俊(東京海洋大学海洋食品科学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、日本からCodex委員会に対し、即席麺の世界規格基準を提出している。その中で、過酸化物価(PV)の上限値を30meq/kgとすること(食品衛生法中の値)も提案しているが、PVの上限値を決定した際の根拠データがほとんど存在しないことより、PV不要論が持ち上がっている。過酸化脂質は毒性を有し、それから発生する二次酸化生成物の毒性はさらに強い。一方、Codexでは酸価(AV)のみを採用する方向であるが、AVで測定される遊離脂肪酸には毒性が認められていない。そこで、PV測定の必要性を訴えるために、これまで、
1.世界中で入手した即席麺のAVおよびPVの測定を行い、即席麺中油脂のAVおよびPV上昇には相関性が全くないこと。
2.即席麺油脂中のPVが40meq/kgを超えると、急激な酸化が開始すること。
3.過度に酸化した油脂をラットに単回投与すると、下痢、立毛などの症状は観察されるが、一般毒性は観察されないこと。
を明らかにしてきた。
そこで本年度は、実際に日本で発生した劣化即席麺による食中毒事件の詳細を、PVを用いて説明することがPV不要論払拭のキーポイントになると考え、神経毒性に焦点を当てた研究を実施した。
研究方法
①酸化劣化即席麺から抽出した油脂を用いた、異食症(PICA)および自発運動量低下観察試験
酸化油脂摂取後の不快感(神経毒性)度合いを、ラットのPICAを指標に行った。この際、鉱物であるカオリン摂取量を元に定量化した。さらに、ラットの自発運動量低下を、ビデオシステムを用いて観察した。これら結果を、神経毒性の観点より考察した。
②酸化即席麺から抽出した油を用いた亜急性毒性試験
上記試験で使用した酸化油を用い、マウスによる亜急性毒性試験を実施した。
結果と考察
これまで毒性が認められていなかった、PV=100meq/kg程度の酸化劣化油脂においても、PICAの有意な増加、および自発運動量の有意な低下が観察され、この程度の酸化劣化油脂に神経毒性が備わっていることを明らかにした。なお、同じ油脂を用いた亜急性毒性試験からは一般毒性は観察されなかった。
結論
神経毒性学的見地からも、油脂を含む食品でのPV測定は必須であり、上限値としては、急激な酸化が進行する30meq/kgを採用することが望ましいと考えられる結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200401135B
報告書区分
総合
研究課題名
油脂加工食品中に生成する脂質酸化物の安全性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
和田 俊(東京海洋大学海洋食品科学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、日本からCodex委員会に対し、即席麺の世界規格基準を提出している。その中で、油脂の規格値として、過酸化物価(PV)の上限値を30meq/kgとすること(食品衛生法中の値)を提案しているが、PVの規格値を決定した際の根拠データがほとんど存在しないことより、PVの採用がペンディングとなっている。そこで、Codex委員会に提出するデータとして、さらにはわが国における油脂加工食品の規格基準の見直しデータとして、PVが、食衛生上の観点からいかなる意味を持つ項目かに関し、その妥当性を検証した。
研究方法
1.世界中で入手した即席麺の酸価(AV)およびPVの測定
世界15カ国中から即席麺を集め、AVとPVを測定した。
2.即席麺中の油脂の酸化関連指標の変化
即席麺を種々の条件で酸化させ、AV、PV、アニシジン価の変化を精査した。
3.酸化即席麺から抽出した油脂を用いた急性毒性試験
酸化劣化させた即席麺を用い、ラットによる急性毒性試験を実施した。
4.酸化劣化即席麺から抽出した油脂を用いた、異食症(PICA)および自発運動量低下観察試験
酸化油脂摂取後の不快感(神経毒性)度合いを、ラットのPICAを指標に行った。この際、鉱物であるカオリン摂取量を元に定量化した。さらに、ラットの自発運動量低下を、神経毒性の観点より観察した。
5.酸化即席麺から抽出した油を用いた亜急性毒性試験
上記4の試験で使用した酸化劣化油を用い、マウスによる亜急性毒性試験を実施した。
結果と考察
即席麺中油脂のAV変化とPV変化には相関がなく、AVのみの測定から油脂の過酸化を判断できないことを明らかにした。また、即席麺の酸化試験より、PVは30meq/kgに到達した辺りから急激な上昇を起こすことを認めた。これはPVの上限を30meq/kgとするサポートデータとなりうる。急性毒性および亜急性毒性試験結果より、PV=100meq/kg程度の酸化劣化油は一般毒性を示さないことを再確認した。一方、PICAおよび自発運動量低下試験より、PV=100 meq/kg程度の酸化劣化油で神経毒性を発症することを世界で初めて明らかにした。
結論
毒性学的見地より、油脂を含む食品でのPV測定は必須であり、上限値としては、急激な酸化が進行する30meq/kgを採用することが望ましいと考えられる結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-