診療ガイドラインの評価と活用に関する研究

文献情報

文献番号
200401084A
報告書区分
総括
研究課題名
診療ガイドラインの評価と活用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(国立保健医療科学院政策科学部)
  • 小泉 俊三(佐賀大学医学部総合診療部)
  • 葛西 龍樹(カレス・アライアンス北海道家庭医療学センター)
  • 武澤 純(名古屋大学救急医学講座)
  • 平尾 智広(香川大学医学部医療管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EBMはプロセスアプローチの代表的手法であり、一定の方法論的な検討結果は診療ガイドラインとして示される。現在は、アウトカムアプローチとの連携に関心が移行しつつある。本年度研究では、診療ガイドラインの評価と年次推移、診療ガイドラインの利用状況、喘息を事例としたガイドラインの普及状況とその影響を検討した。
研究方法
診療ガイドラインの評価は、先行研究にて開発したAGREE instrument日本語版を用いて主要53診療ガイドラインの評価を実施し、領域ごとの評価、年次推移、特に同一疾患での改訂については改善の有無を明らかにした。利用状況は、約350の診療ガイドラインを収録している東邦大学メディアセンター・クリアリングハウスの利用者を対象にWEB調査を実施した。喘息の診療ガイドラインを取り上げ、死亡率や入院率、医療費の変化、救急搬送の低下等の結果に関わる項目、臨床ガイドラインの認知度や使用度等の過程に関する事例検討を行った。
結果と考察
①診療ガイドラインの評価:年次推移では最近作成されたものほど完成度が高く、また同一疾患での改訂では改善を認めた。診療ガイドライン作成に一定程度の習熟が認められた。②診療ガイドラインの利用:クリアリングハウスへのアクセス数は、2001年からの5年間で6倍以上に増加し、利用者は医師、薬剤師、一般市民の順であった。利用診療ガイドラインは、脳神経疾患、循環器疾患、呼吸器疾患で多く、利用目的は、診療、教育・研究・論文執筆で多かった。WEBによるガイドライン・クリアリングハウスは診療ガイドラインの利用促進に有用であり、掲載数と全文公開が重要であることが示唆された。③喘息の事例検討:喘息診療ガイドラインの臨床的インパクトの分析では、作成・改訂年頃から死亡率、入院率の低下、救急搬送重症患者の減少が見られた。また医療費の低下も認め、診療ガイドラインの普及は費用削減と実際の健康の向上に貢献したと考えられた。社会医療診療行為別調査による推計では、ガイドラインのコンプライアンスが上昇した。吸入ステロイド剤は、世帯健康調査、開業医への質問票調査ともに数十%が使用していたが、特に小児で低く、ガイドラインの更なる普及が死亡率や医療費を低下させる可能性を示唆した。
結論
本研究は、診療ガイドラインの作成者と利用者(医療スタッフ、一般人)に焦点をあて、これら関係者の間での診療ガイドライン普及状況を明らかにすることを目的とした。今後は、作成者への支援体制、利用者別の情報提供、医療スタッフ対象のEBM、診療ガイドラインの研修プログラムについての検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-