医療過誤に係る民事訴訟判決における医師の法的責任の認定に関する研究

文献情報

文献番号
200401073A
報告書区分
総括
研究課題名
医療過誤に係る民事訴訟判決における医師の法的責任の認定に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
木村 光江(東京都立大学(法学部))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師及び歯科医師に対する行政処分については、従前、刑事処分を受けた医師等を中心に行われてきたが、近時、刑事処分に至らない程度の医療過誤を繰り返す医師等の存在が明らかとなり、平成14年12月の医道審議会において、「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方」が示され、その具体的運用方法を検討が急がれている。本研究は、行政処分の根拠としての民事訴訟の現状等について、調査、検討し、適正な処分制度の運用に資することを目的とする。
研究方法
本研究は、その出発点を医道審議会による上記平成14年12月13日付文書、ならびに医道審議会による「刑事処分とならなかった医療過誤等に係る医師法上の処分について(当面の対応と将来的な対応)」(平成16年3月17日付)に据え、医療過誤に関する実例を分析し、特に、認定事実を医師法に基づく医師に対する行政処分の基礎事実に用いることの合理性につき検討した。また、被害者の証拠収集の困難さを踏まえ、医療過誤訴訟における証拠収集に関する訴訟法上の技術につき、欧米諸外国の法制を検討した。
結果と考察
1.「医事に関する重大な不正」があったとして処分対象とすべき医師は、刑事処分対象者に限らないものの、単に医療過誤訴訟で敗訴したことを「重大な不正」とすべきではなく、医師資格を欠くとすべき行為の有無を問題とすべきである。医師資格の付与に関する適格性判断として、医療過誤訴訟における認定事実を用いるべきである。2.医療過誤訴訟での認定事実を医師資格の剥奪・停止等の処分の根拠事実とするための法技術として、アメリカ合衆国連邦証拠規則が参考となる。同規則第404条第(b)項は、当該不正行為の有無を証明する証拠として、当該不正行為と直接関係のない他の不正行為を証拠として利用することを認める。また、同規則第404条第(a)項第(1)号は、ある者の性格や性格的特徴を、特定の行為の存否の立証に用いることを、一定の要件のもとに認めており、リピーター医師についての処分に示唆を与えるものである。
結論
医療過誤訴訟の認定事実を医師資格の剥奪・停止の基礎事実とすることは可能であるが、基礎とされるべきは認定された事実であり、訴訟の勝敗を含めた司法判断そのものではない。損害賠償責任の有無ではなく、医師資格に対する処分に相応しい「重大な不正」の有無が問われるべきだからである。リピーター医師に関しても、軽微な過ちでも、それを繰り返すことをもって、医師としての適格性判断に関わる問題として捉え得る。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-