医療安全のための患者参加のあり方とその効果

文献情報

文献番号
200401069A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全のための患者参加のあり方とその効果
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 俊子(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
転倒・転落及び、内服薬自己管理に焦点を当て、医療安全のための患者参加とそのための患者教育のあり方とその効果を検証する。
研究方法
1)転倒・転落防止
認知障害がなく(MMSE20点以上)かつ自力歩行が可能な入院患者を対象に、身体機能(TUGT)と自己効力感(FES)のアセスメントを行った。介入群(n=100)に対しては、各患者に対しその測定結果を伝え、転倒予防に関する教育を実施するとともに、患者にエクササイズに参加してもらった。医療安全のための患者教育による転倒予防効果を転倒率・重症度・費用対効果から評価し、さらに入院時と退院時のアンケートにより、患者の医療安全への参加意識の変化を評価した。
2)内服薬自己管理
コミュニケーションが可能な入院患者に対し、入院時に認知度(MMSE)、服薬理解能力(RCS)、薬剤の理解度の評価を行い、アセスメント結果に基づく指導を実施した。服薬に対する意識と、医療への参加や医療ミスに関する意識について、アンケート調査を実施した。指導から2週間後もしくは退院時に、再度薬剤の理解度の評価を実施した。
結果と考察
結果
1)転倒・転落防止
両群の転倒率・傷害度の有意差はなく、費用対効果もみられなかった。しかし、転倒予防プログラムに参加することで、医療への患者参加の意識は有意に向上した。
2)内服薬自己管理
MMSEは入院時の持参薬対する理解度と関連があったが(p<.05)、RCS得点と理解度の関連はみられなかった。薬剤名と作用に関する理解度は、指導前後で有意に向上した(p<.05)。 医療への参加や医療ミスに対する意識は、年齢、MMSE得点、薬剤の理解度と関連があった。

考察
患者参加のための介入の効果は多様な因子があるため単純に評価することは困難であるが、入院中の患者に意識して教育や情報提供を行うことで患者の理解が深まり、医療安全のための協働としての「パートナーシップ」が促進されることが示唆された。今後さらに、患者の個別性に合わせた患者参加を考えていく必要がある。
結論
患者教育はリスクマネジメントのコアの部分とされている。医療安全への患者参加には様々なレベルがある。適切な情報提供を行い患者と医療者が協働することによって、その患者にとって望ましい方法での患者参加を行うことで患者安全の向上が促される。

公開日・更新日

公開日
2005-10-28
更新日
-