臨床現場でのエビデンス適用・不適用決定の過程と結果に関する調査研究

文献情報

文献番号
200401067A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床現場でのエビデンス適用・不適用決定の過程と結果に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(財団法人聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 新保 卓郎(京都大学大学院医学研究科臨床疫学)
  • 小山 弘(京都大学医学部附属病院総合診療科)
  • 平 憲二(京都大学医学部附属病院総合診療科)
  • 松井 邦彦(熊本大学医学部附属病院総合臨床研究センター)
  • 山城 清二(富山医科薬科大学総合診療部)
  • 中村 清吾(財団法人聖路加国際病院外科)
  • 福岡 敏雄(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限られた医療資源の中で医療の質を確保するには、科学的根拠に基づき、患者の意向やニーズに沿った適切な臨床判断が求められる。本研究は、EBMの手順の第4ステップである、エビデンス適用性の判断の過程が、臨床の現場で個々の患者に対して、どのようになされているかを解析し、適切な判断を下す際の問題点を明確にし、問題点を克服する方略を提言する。
研究方法
①エビデンスの適用に影響する因子の同定、②ガイドラインで推奨されるエビデンスが実際に適用されている割合の調査、③エビデンスの適用の認知プロセスに関する質的研究、④エビデンスの視覚化について、プロトコルの作成と予備的データの解析を行った。
結果と考察
①第13回日本乳癌学会総会において、乳癌の治療に携わる医師約150名に患者シナリオを提示し、決断と考慮因子を記録する予定である。がん患者のシナリオを用い、患者と看護師、医師間で判断が異なる要因をAnalytical Hierarchy Processモデルで解析する。

②3教育病院で心筋梗塞後の患者の処方薬を調査する。予備調査では、急性心筋梗塞患者の予後を改善するとされるβ遮断薬が、実際に処方されていたのはわずか12%であった。活性型ビタミンD製剤や乳酸カルシウムを処方された患者で起こりうる有害事象について、ガイドラインでの推奨に従ってモニターされているかを、電子カルテシステム上で調査する。また、糖尿病専門医と一般(内科)医の間で治療内容やインスリン注射の適応の判断に違いがあるかを調査する。

③大学病院のICUで開催されるカンファランスをテープレコーダーに記録し、質的研究の手法を用いて解析する。

④Geographic Information Systemを利用してエビデンスを視覚化することが臨床判断に影響するかを調査する。

今年度は複数の研究プロトコルの作成、方法論の妥当性検討、一部の予備的なデータ解析を行った。明年度は、データ収集、解析を行う予定である。
結論
主として研究プロトコルの作成にとどまったが、予備調査ではエビデンスの適用は診療ガイドラインなどで薦められるレベルをかなり下回っていた。その原因の解明が、より適切なエビデンスの適用、そして患者アウトカム・医療の質の改善につながる可能性が高い。

公開日・更新日

公開日
2005-06-24
更新日
-