科学テロ災害時の医療機関での検査体制充実に関する研究

文献情報

文献番号
200401061A
報告書区分
総括
研究課題名
科学テロ災害時の医療機関での検査体制充実に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
屋敷 幹雄(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東京地下鉄サリン事件や和歌山毒物混入事件を契機に、化学物質の関与した中毒や事件が急増している。急性中毒患者は救急隊の判断で市中の医療機関に搬送されるが、搬送される医療機関によって検査精度の格差があれば、平等な治療を受けることができない。これは厚生労働行政上、重大な問題であり、早急に解決すべき課題と考える。また、多くの医療現場では化学災害に対する認知不足や“対岸の火事”的な認識であり、意識改革が必要である。これらは、瞬時に改革できるものではなく、徐々にではあるが化学災害に対する知識を習得させ、継続的に危機意識を植え付けていかざるを得ない。そのためには、情報を集約し、災害時に採るべく方策を想定して、日頃から訓練しておく必要がある。
研究方法
1)化学災害に関する現状調査では、過去4年間(平成13~16年度)に厚生労働科学研究費補助金を受けて実施した薬毒物分析サーベイ時の対応状況をもって調査資料とする。2)医療機関における化学物質特定法と原因化学物質の特定に関する実地講習会では、生体試料中化学物質検査の実地講習会を実施する。3)薬毒物検査の精度管理では、救命救急センターの分析技術者を対象として、薬毒物分析の実態調査および分析精度調査を行う。
結果と考察
1)の現状調査では、平成10年度に配備された機器の有効活用と化学災害に対する積極的な取り組みが伺えた。現時点では、化学災害に直結しているとは言い難いが、日頃の積み重ねが重要ある。2)では、生体試料中の化学物質13種類の推定が30分程度で行えるため、現場での検査にも利用可能であり、各医療機関での薬毒物検査体制の構築に役立っていると考える。3)では、79施設(44.1%)の参加があった。薬毒物同定に関しては、調査回数を重ねることで技術レベルの向上が見られる。また、定量を実施している施設も増加している。しかし、さらなる精度管理や中毒教育が必要である。
結論
本研究成果により、救命救急センター等に配備された機器を有効に活用し、化学テロ災害に対処可能な分析体制の構築の足がかりが認められた。しかし、サリンなど化学兵器の分析は無理であり、日頃経験する薬毒物分析での経験を重ね、本研究を継続的に実施し、さらなる分析技術レベルの向上、分析者の教育が必要である。本研究成果は、国民の健康維持や医療費の削減につながり、厚生労働行政に資するところは大きい。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-