離島・過疎地における新しいユビキタス遠隔医療支援

文献情報

文献番号
200401054A
報告書区分
総括
研究課題名
離島・過疎地における新しいユビキタス遠隔医療支援
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 晃敏(旭川医科大学(眼科学講座))
研究分担者(所属機関)
  • 石子 智士(旭川医科大学(眼科学講座))
  • 加藤 祐司(旭川医科大学(眼科学講座))
  • 籠川 浩幸(旭川医科大学(眼科学講座))
  • 長岡 泰司(旭川医科大学(眼科学講座))
  • 廣川 博之(旭川医科大学付属病院(経営企画部))
  • 山上 浩志(旭川医科大学付属病院(経営企画部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
離島・過疎地における専門医の量的・質的不足を解決するため、より効率的・効果的な過疎地医療のあり方の研究を行う。
a.ユビキタス遠隔医療システムを導入した新たな医療支援手法の研究
b.遠隔医療システムの医療面、経済面、社会面からみた事業評価
研究方法
我々の12年間にわたる遠隔医療実績の上に、インターネット・プロトコルを主とし、インフラとしてはADSL回線を用い遠隔医療を行った。
市立稚内病院(拠点病院)の眼科医2名を、月1回交代で利尻島診療所へ派遣し、診療所、拠点病院眼科、札幌市の関連病院及び旭川医科大学遠隔医療センター(センター病院)に遠隔医療機器を設置した。島に派遣された医師は眼科診療を行い迅速な治療が必要な場合等、拠点病院、札幌市の病院、センター病院とリアルタイム伝送を行った。
事業評価は、対象医療分野の範囲選定、遠隔医療システムの導入効果の体系的整理、一次効果・二次効果の検討などを外部専門機関に委託した。
医療支援が、離島・過疎地の(1)医療の質の向上、(2)患者の満足度、(3)費用対効果、(4)投資効果、また(5)行政的観点からの効果等を検討した。
結果と考察
手術患者が発生すると、利尻病院の眼科医は、他の3病院の医師の意見を求め、稚内病院で手術が出来るか、最先端医療が必要なら旭川医科大学か、札幌メモリアル眼科へ紹介しなければならない。利尻病院の医師が患者にどこで手術を受けたいかを尋ね、患者と家族は、稚内病院を選ぶ場合もあるが、親類が札幌に居住する場合、札幌メモリアル眼科を選択する場合も多い。この遠隔医療システムを用いて、その場で札幌の医師と患者が直接相談し、手術日まで決定できる。患者、家族そして、医師側も、スピーディに治療計画が立てられる。
結果は、「へき地保健医療対策検討会」(平成17年3月31日)で報告した。利尻島の白内障患者(約1,300人)、糖尿病網膜症患者(110人)を、遠隔支援を受けるか否かで、かかる移動費や医療費等の差を、典型的なパターンを基に計算し、比較した。
その結果、システムを導入すると、白内障で10億9,104万円、糖尿病網膜症で2億5,750万円の削減効果が見込まれた。移動費用・宿泊費用の削減効果が最も大きく、計12億7,960万円であった。病気が早く治り、早期に仕事に復帰できることによる所得向上効果が5,230万円、医療費の削減効果は約1,700万円であった。
結論
専門性の高い分野、例えば眼科領域では、遠隔医療は最先端医療を供給するという観点のみならず、医療費等患者の経費削減の観点からも過疎地医療に有効であると結論された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-02
更新日
-