我が国における尊厳死に関する研究

文献情報

文献番号
200401020A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における尊厳死に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
松島 英介(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池永昌之(宗教法人 在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院)
  • 内富庸介(国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部)
  • 甲斐克則(早稲田大学大学院法務研究科)
  • 竹中文良(ジャパン・ウェルネス)
  • 田村里子(医療法人 東札幌病院)
  • 平澤秀人(医療法人啓仁会 平沢記念病院)
  • 松島たつ子(財団法人 ライフプランニングセンター ピースハウス病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において、「尊厳死」問題をめぐる情勢は大きく、しかも急速に変化しようとしている。こうした中で、実際の終末期医療における患者やその家族の声を反映すべく、こうした医療に携わる現場のスタッフが現在直面している問題や課題、さらに現場から生み出された示唆や方策を汲みとり、今後の我が国の尊厳死の問題を方向づける上で有効と思われる点を見出すことを目的に本研究を行った。
研究方法
我が国の尊厳死に関する問題を、次の4つの側面に分けてそれぞれ検討を行った。すなわち、1.尊厳死の定義や法的な意味づけについて、2.緩和医療供給システムの問題について、3. 患者本人と家族の意思の問題について、4.「尊厳ある生」について、である。
結果と考察
尊厳死の定義については、そのあいまいさや法的な問題点が浮き彫りになり、今後さらに明確化していく必要が確かめられた。緩和医療供給システムについては、患者が尊厳ある死を遂げる場の選択さえ保障されていない実情があることが指摘され、今後の緩和ケアネットワーク作りが大きな課題であることがわかったことは、医療の方向性を示す重要な所見である。患者本人と家族の意思の問題では、家族の意思が尊重されるという我が国の医療現場の特徴が改めて明らかにされ、とくに老年者の場合の患者の意思の捉え方についての問題は、今後議論の余地が残るところである。そして、何よりも「尊厳ある死」に至る「尊厳ある生」を如何に充実させるかという問題では、まだまだ解決すべき点が多く、現実の医療現場に根付いたさらに詳しい検討が必要である。
結論
尊厳ある死を達成するためには、医療現場ではまだまだ問題が多いことがわかった。とくに病名や余命告知、終末期における治療方針や延命処置の希望は、患者本人に直接伝えられるよりも、家族に伝えられるケースが多く、患者と家族の意思の異同をどう扱っていくかが大きな課題である。さらに、緩和医療の現場では、ほとんどの医療関係者が終末期医療システムの不備を感じており、終末期患者が「尊厳ある生」を過ごしながら、尊厳死を達成するためには、緩和ケア供給システムの整備をする必要があることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-