電子診療録の医療連携への応用と推進における問題点の検討

文献情報

文献番号
200401008A
報告書区分
総括
研究課題名
電子診療録の医療連携への応用と推進における問題点の検討
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三原 一郎(医療法人三原皮膚科 山形県医師会)
研究分担者(所属機関)
  • 辰巳 治之(札幌医科大学・解剖学第一講座)
  • 秋山 昌範(国立国際医療センター医療情報システム開発研究部)
  • 根東 義明(東北大学大学院医学系研究科医学情報学)
  • 平井 愛山(千葉県立東金病院)
  • 武田 裕(大阪大学大学院生体統合医学専攻生体情報医学)
  • 原 量宏(香川医科大学附属病院医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大きく二つの研究課題に取り組んだ。1点目は、「電子診療録システムを利用することでもたらされる具体的な効果の測定」、2点目は、前年度の調査で導出された仮説のうちで重要と思われる「地域性と受け入れられる技術特性の関係の検証」である。
研究方法
「電子診療録システムを利用することでもたらされる具体的な効果」については、2地域において、半構造化インタビューや質問紙調査によって、患者及び医療従事者にとっての効果を検証した。
また「地域性と受け入れられる技術特性の関係」については、都市型連携モデル2事例、田園型連携モデル2事例について、ヒアリング等の現地調査を行い、さらにこのうちの1事例については、システム利用者および管理者の立場から詳細な考察を行った。
結果と考察
○情報共有とネットワークの効果
特に訪問看護師や薬剤師といったコメディカルにとっては、従来の医師との紙のやりとりでは共有できなかった各種患者情報を共有することで、対医師、対患者や家族のコミュニケーションがともに向上し、より質の高いケアを実現できていることが明らかになった。また、患者や一般市民等にネットワークを用いて必要な情報をタイムリーに提供することで、生活習慣病等の予防効果が上がることも明らかになった。
○地域特性と受け入れられるシステム特性との関連
ASP型電子カルテは、人口10?20万規模の医療圏で、かつ人的ネットワークが確立されていれば、より質の高いチーム医療のための極めて有効なツールとなっている。都市部では、「紹介状発展型」(紹介状にカルテ情報や画像を添付しての医療連携)が囲い込みのリスクや参加の敷居も低く、普及が期待されているが、実際に普及のスピードは遅い。
この原因を詳細な事例調査で見てみると、システム的要因や運用上の問題に加え、運用経費の負担、診療情報の保存、個人情報保護といった、社会的・経済的な阻害要因も明らかになった。
結論
本年度の研究の結果、継続している地域においては、IT活用による情報共有によって組織や職種を越えた医療提供者のコミュニケーションが向上し、医療提供者の職務充実や患者サービスの向上に寄与しているという確証を得ることができた。特に生活習慣病等や在宅患者等慢性期疾患の患者の治療にこうしたツールが有効であることが実証された。

公開日・更新日

公開日
2005-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200401008B
報告書区分
総合
研究課題名
電子診療録の医療連携への応用と推進における問題点の検討
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三原 一郎(医療法人三原皮膚科 山形県医師会)
研究分担者(所属機関)
  • 辰巳 治之(札幌医科大学・解剖学第一講座)
  • 秋山 昌範(国立国際医療センター医療情報システム開発研究部)
  • 根東 義明(東北大学大学院医学系研究科医学情報学)
  • 平井 愛山(千葉県立東金病院)
  • 武田 裕(大阪大学大学院生体統合医学専攻生体情報医学)
  • 原 量宏(香川医科大学附属病院医療情報部)
  • 中山 健児(なかやまクリニック院長・新宿区医師会 医療情報委員会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デジタル化された診療情報を複数の医療機関で共有し、医療連携に役立てるというしくみがなぜ定着、普及しなのか。また成功地域においてはどのような効果を上げているのか。本研究では先駆地区の取り組みを通して、普及の課題を検討するとともに、効果の検証を行った。
研究方法
平成15年度は、地域医療連携に電子カルテシステムを用いた事例のうち、成功と言われていた5つの地域を詳細にケーススタディし、そこから成功の要因を抽出した。この結果を踏まえ、翌平成16年度の研究は、大きく二つの課題に取り組んだ。1点目は、「電子診療録システムを利用することでもたらされる具体的な効果の測定」で、質問紙調査、半構造化インタビューを、患者および医療従事者を対象に行った。2点目は、「地域性と受け入れられる技術特性の関係の検証」であり、都市型モデル2事例、田園型モデル2事例についてヒアリング等の現地調査を行った。
結果と考察
○成功要因と阻害要因について
人的要因、金銭的要因、システム的要因、制度的要因について、詳細な考察を行い、各要因の重要性を議論した。
○情報共有とネットワークの効果
特に訪問看護師や薬剤師といったコメディカルにとっては、従来の医師との紙のやりとりでは共有できなかった各種患者情報を共有することで、対医師、対患者や家族のコミュニケーションがともに向上し、より質の高いケアを実現できていることが明らかになった。
○地域特性と受け入れられるシステム特性との関連
ASP型電子カルテは、人口10?20万規模の医療圏で、かつ人的ネットワークが確立されていれば、より質の高いチーム医療のための極めて有効なツールとなっている。都市部では、「紹介状発展型」(紹介状にカルテ情報や画像を添付しての医療連携)が囲い込みのリスクや参加の敷居も低く、普及が期待されているが、実際に普及のスピードは遅い。
結論
継続のための、最も大きな課題は、参加のインセンティブ設計である。地域全体として目標を共有し、そのためにかかる経費等の負担をどう分担するのかを検討することが重要である。病院、診療所、さらには訪問看護ステーションや薬局、介護施設等、それぞれがメリットを感じられる仕組みを作る必要がある。
本研究は、医療機関の機能分化と連携におけるIT利活用が、利用者や患者にとってメリットをもたらすことを具体的に示した点において、今後のわが国の医療政策に大きな含意を持つと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-26
更新日
-