医療従事者における針刺し・切創の実態とその対策に関する調査

文献情報

文献番号
200401001A
報告書区分
総括
研究課題名
医療従事者における針刺し・切創の実態とその対策に関する調査
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
洪 愛子((社)日本看護協会看 認定部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の針刺し・切創の状況とその効果的な予防策に関する課題を明らかにすることを目的として行った。
研究方法
感染管理認定看護師を中心とする日本感染管理ネットワーク会員のうちEPINet法で針刺し・切創の報告データを収集している研究協力者37名から2003年と2004年の施設データを集積。木戸内らによってEPINet法で1996年以後集積された報告データと比較分析。また、複数施設において実施した対策の効果を分析。
結果と考察
2003年度は35病院で針刺しが1,729件、2004年度は37病院で1,840件。職種別に看護師が60%と以上ともっとも多く、報告数からやや減少傾向も事故報告指数から0.10から0.32へと著しく増加している。発生は病室が34%以上と多く、次いで手術室が20%。手術関連器材を原因とする針刺し内訳から、縫合針が55%ともっとも多い。
安全器材の使用病院と非使用病院は①操作中、操作後廃棄までの過程で安全器材非使用病院の発生・報告率が高い。②廃棄ボックスへ廃棄後投入口からのはみ出し器材で針刺し・切創、は安全器材使用病院で高率に報告。対策導入効果を調査したケースでは、データ分析結果から優先する対策を選択、「リキャップせずに使用後その場で針を廃棄するシステム」の導入。導入後1年経過し針刺し減少。他のケースでは、採血業務の見直しに伴い、静脈注射と採血の基本的知識,実施者の責任,実技について教育を始め,順次拡大した.職業感染防止の視点も盛り込まれていた.実技訓練は,適切な針の操作になれることによって使用中の針刺しが明らかに減少。
結論
1)事故報告指数から、報告件数の増加は事故報告数の増加を示唆。事故報告指数の算出は報告件数と報告率を評価するため意義がある。
2)手術室での縫合針の安全器材導入を検討することが急務。
3)針刺しの原因器材として安全器材が増加。導入に際し安全器材の適切使用の教育・訓練を徹底することが重要。
4)廃棄容器の設置と利用も適切にする。
5)収集データを分析し、状況に応じて優先すべき対策を選択する。
6)針刺し防止の教育・啓発の実施ポイントは針刺し発生時の対応などの知識だけでなく,基本となる適切な針の取り扱いを訓練する。
7) 針刺し・切創発生時の報告データを分析し、改善計画につなげるシステムが整備されていない。国内のデータベース構築とデータ活用する支援システムの整備も急務。

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200401001B
報告書区分
総合
研究課題名
医療従事者における針刺し・切創の実態とその対策に関する調査
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
洪 愛子((社)日本看護協会看 認定部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の針刺し・切創の状況とその効果的な予防策に関する課題を明らかにすることを目的として行った。
研究方法
感染管理認定看護師を中心とする日本感染管理ネットワーク会員のうちEPINet法で針刺し・切創の報告データを収集している研究協力者37名から2003年と2004年の施設データを集積。木戸内らによってEPINet法で1996年以後集積された報告データと比較分析。また、複数施設において実施した対策の効果を分析。初年度は米国データと1996年から2000年の日本の集積データを比較分析。
結果と考察
針刺し・切創の発生の概要は、職種別には医療従事者の中でも特に看護師に多く発生、次いで医師が多い。発生場所は病室内がもっとも多く、次いで手術室が多い。原因器材別にはディスポーザブル注射針がもっとも多く、次いで翼状針と縫合針が多い。二年間の複数施設での対策の実際と針刺し予防対策の導入状況により、針刺し・切創発生がどのように変化するかを分析結果から、有効な対策が示された。安全器材の導入に際して、教育と訓練を徹底した場合には、著しく針刺し・切創が減少することが明らかになった。教育と訓練が手順どおりに行われなかった場合にも針刺し・切創は減少しているものの安全器材の適切な使用がされていなかったことが原因で針刺し・切創の発生がゼロにはならなかった。携帯型の廃棄容器を導入し使用を徹底することでリキャップが減少し、著しく針刺し切創が減少、縫合用鈍針やニュートラルゾーンの徹底により手術器材関連の針刺し・切創の減少がみられた。
結論
本研究により、単一の方法でなく、以下対策を複合的に推進することが針刺し・切創を効果的に予防するために重要である。
1)工学的管理(安全にデザインされた廃棄容器の設置と使用後その場で破棄できる環境、用途に応じた安全器材の使用)、2)作業管理(リキャップの禁止、ニュートラルゾーンの使用等)、3)教育・指導(基本となる適切な針の取り扱いを訓練することや、医療チーム内のコミュニケーションのよさを養うことも含める)、4)針刺しサーベイランスシステムの整備(収集データを分析し、状況に応じて優先すべき対策を選択する手法を導入し、プロアクティブな安全対策を構築する)5) スタンダードプリコーションの徹底
さらに、「針刺し・切創発生時の報告データを分析し、改善計画につなげるシステム」「国内のデータベース構築とデータ活用する支援システム」の整備が急務である。

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-