医療安全の評価指標の開発と情報利用に関する研究

文献情報

文献番号
200400991A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全の評価指標の開発と情報利用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療技術の成熟、消費者意識の高揚を背景に、医療サービスの質に対する社会の期待は大きくなっている。本年度の研究は、臨床指標を用いたアウトカム評価手法の医療安全への応用、患者参加の可能性を明らかにする。
研究方法
①既存の臨床指標について医療安全の観点からのレビューを実施した。②病院の行う診療アウトカム評価事業のデータを基に、医療安全関連の臨床指標の日本への導入可能性の検討を実施した。③3病院の入院患者を対象に質問票調査を実施し、患者が経験した非安全事象と院内レポートシステムの結果を比較検討した。
結果と考察
①医療の質を測定する上で臨床指標は有力な手法ではあるが、utilization review、チェックリスト、パス、認定、患者満足等の手法が用途に応じて併用される必要がある。これらの役割分担について整理を行った。豪州ACHSの方法に基づいて、臨床指標を、構造、過程、結果に3分類し、また機能面から効果、適切性、効率、応需、アクセス可能性、安全、継続性、サービス提供可能性、持続可能性に分類を試みた。②東京都病院協会診療アウトカム評価事業では、医療安全関連臨床指標として、(1)直接関連指標:転倒・転落、院内感染、抑制の発生率、(2)間接的関連指標:疾患・処置別の治療成績を用いている。2002年度データの解析では、転倒・転落0.76、院内感染1.33、抑制6.06(いずれも入院千人・日当)であった。参加病院へのデータ解析結果フィードバックの医療の質改善への効果は学会内でも議論されており、今後更なる研究が必要である。③患者が経験した非安全事象に関する質問票調査では、患者の回答は「非安全事象」と説明不足など安全は維持されているものの不安・不快などを生じた「不安・不満事象」に分類された。院内リポートシステムでは掌握されていた非安全事象は1/3のみであり、医療安全確保の観点から患者参加は不可欠であることが窺われた。また医療提供者側に伝わっていた訴えは約半数であり、安全についての医療者・患者間のコミュニケーションの向上は優先度の高い課題であることが窺われた。
結論
医療安全の確保を達成するには、種々の方策が同時並行して進められる必要がある。特に適切な臨床指標の選択、結果の適時の病院へのフィードバックが医療の質と安全の向上をもたらすかを検証する必要がある。また医療側のみの活動には限界があり、患者参加を促進する方策が優先度の高い課題であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200400991B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全の評価指標の開発と情報利用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 ちひろ(いいなステーション)
  • 池田 俊也(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療技術の成熟、消費者意識の高揚を背景に、医療サービスの質に対する社会の期待は大きくなっている。本研究では、臨床指標を用いたアウトカム評価手法の医療安全への応用、患者参加の可能性を明らかにする。
研究方法
①既存の臨床指標について医療安全の観点からのレビューを実施した。②米国を中心に医療事故の院外報告システムのレビューを実施した。③病院の行う診療アウトカム評価事業のデータを基に、医療安全関連の臨床指標の日本への導入可能性を検討した。④3病院の入院患者を対象に質問票調査を実施し、患者が経験した非安全事象と院内レポートシステム結果を比較検討した。
結果と考察
①医療の質の測定には臨床指標は有力な手法であり、用途に応じて併用される必要がある。これらの役割分担を整理した。臨床指標を、豪州ACHSの方法に基づいて3分類し、また機能面からの分類を試みた。②院外への強制的な医療事故報告制度は、責任の所在、被害者救済を重視するものである。米国の州衛生担当者を対象にした質問票調査では、強制的報告制度を有していたのは半数以下であった。医療事故の定義が州により異なること、連邦レベルでの免責が未確立なこと、JCAHOなど他機関との整合性に問題が指摘された。③東京都病院協会診療アウトカム評価事業では、医療安全に関わる臨床指標として(1)直接関連指標:転倒・転落、院内感染、抑制の発生率、(2)間接的関連指標:疾患・処置別の治療成績を用いている。データの集計、参加病院へのフィードバックによる医療の質改善への効果については、今後更なる研究が必要である。④3病院の入院患者による質問票調査では、患者の回答は「非安全事象」と安全は維持されているものの不安・不快などを生じた「不安・不満事象」に分類された。院内リポートシステムで掌握されていたのは非安全事象の1/3のみであり、医療安全確保の観点から患者の参加は不可欠であることが窺われた。また、医療側に伝えられた非安全事象は約半数のみであり、安全についての医療者・患者間のコミュニケーションの向上は優先度の高い課題であることが窺われた。
結論
医療安全の確保を達成するには、種々の方策が同時並行して進められる必要がある。特に、用語の統一、適切な臨床指標の選択、結果の適時の病院へのフィードバックの医療の質・安全の向上への影響を検証する必要がある。また医療提供者側のみの活動には限界があり、患者参加を促進する方策が優先度の高い課題である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-