麻酔関連の医療事故を防止する方策を立案するための要因分析手法に関する研究

文献情報

文献番号
200400962A
報告書区分
総括
研究課題名
麻酔関連の医療事故を防止する方策を立案するための要因分析手法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純三(慶應義塾大学医学部麻酔科)
研究分担者(所属機関)
  • 大村昭人(帝京大学医学部附属溝口病院麻酔科)
  • 唐澤富士夫(防衛医科大学麻酔科)
  • 畔政和(国立循環器病センター手術部)
  • 古賀義久(近畿大学医学部麻酔科)
  • 津崎晃一(慶應義塾大学医学部麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
麻酔に関するインシデントの調査を行い,その内容や原因,潜在素因などを分析することで事故防止対策をたてるための基本的方針と解析方法の検討を加え,麻酔安全ガイドラインを導くことを目的とする。麻酔の安全性を確保することは,医療に対する国民の信頼の回復と,事故発生による医療コストの軽減に結びつく。
研究方法
裁判判例調査や保険会社資料に基づくclosed claims study, (社)日本麻酔科学会が毎年施行している偶発症例調査,「誤薬」アンケート調査,「手術室内モニター・麻酔器の使用実態,安全な麻酔のためのモニター指針の遵守状況」に関するアンケート調査を行った。
結果と考察
1)偶発症例調査
対象施設延べ数が2,910施設,症例数が5,223,174例に達し,危機的偶発症発生率(対1万例)は心停止が6.22,高度低血圧が11.06,高度低酸素症が3.88,その他(記入なしを含む)が3.64であった。麻酔管理が原因の死亡率が0.10,心停止の死亡率(対1万例)は3.33,心停止以外の死亡率は3.45であった。
2)誤薬アンケート調査
誤薬インシデントは薬物種類の誤りが705件,投与量の誤りが174件,投与経路の誤りが149件,その他が30件であった。種類の誤りは,筋弛緩拮抗薬と血管作動薬(昇圧薬)の取り違いが最も多かった。
3)「安全な麻酔のためのモニター指針」に基づくアンケート調査
全国の病院8,132施設の内2,897施設(麻酔科認定病院437施設,非認定病院2,460施設)から回答が得られ,パルスオキシメータ,CO2モニターの普及率は高率であったが,低酸素防止装置を欠く旧式麻酔器は認定病院で46施設,非認定病院で670施設が保有しており,いずれも使用中であった。「安全な麻酔のためのモニター指針」の周知度は,認定病院で92.0%,非認定病院で50.6%であり,指針の周知を図る必要性が認められた。
4)紛争解決事例の原因究明に関する研究
1987年から2004年までに医事紛争が解決した事例を対象とした分析が進行中で,結果の発表は同意がすべて得られた時点で行う。
結論
調査結果から麻酔関連インシデントに関わるいくつかの要因が浮き彫りにされてきたが,具体的な提言や指針を生み出すための十分な情報データベースに成長させるために,平成17年度に予定している調査等のデータの蓄積が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-