医療安全推進に関する法的問題に関する研究

文献情報

文献番号
200400959A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全推進に関する法的問題に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学・法学部・国際関係法学科)
研究分担者(所属機関)
  • 児玉安司(三宅坂総合法律事務所)
  • 加藤久雄(慶応大学法学部)
  • 寺野彰(獨協医科大学)
  • 神作裕之(東京大学法学部)
  • 山口斉昭(日本大学商学部)
  • 佐藤雄一郎(横浜市立大学医学部)
  • 藤澤由和(新潟医療福祉大学)
  • 長谷川友紀(東邦大学公衆衛生学)
  • 飯田修平((社)全日本病院協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,日本における医療安全の推進のためには,特に,①医療機関内部の医療事故情報収集システム,②医療事故情報を医療機関・国・関連業界で迅速かつ適正に共有し分析把握するシステム,③患者の苦情から医事紛争に至る全過程における適正な苦情対応システム,などの構築が緊要であると捉え,そして,それらの不可欠な制度構築のために,本邦の現行法制度を十分に検討し,かつ,諸外国の関連法制を調査した上で,本邦のシステムの基盤となる望ましい法制度のあり方を考究することとした.
研究方法
上記目的のため,第1に『英米豪独仏などにおける医療事故情報に係る法制度』,第2に『英米豪独仏などにおける患者の苦情対応・紛争処理に係る法制度』,第3『本邦における医療事故・医事紛争に関連する患者の意識についての調査研究』を行った.
結果と考察
医療事故情報の取扱いに関しては,現在各国とも様々な政策や取り組みに着手してはいるが,それらはまだ緒についたばかりである.ただいくつかの特徴も明らかになった.英国や豪州では,医療安全について,ミスの報告制度によって原因を分析し,そこから学ぼうとする姿勢を強調し,医療現場で安全に対する意識改革を目指してきた.そのために,従来敵対的に捉えがちであった患者をも巻き込んだ形で医療の安全を向上させる努力をしてきた.同時に,仏,豪,英など多くの諸国では迅速な被害者救済のため,裁判外での解決が促進されており,簡単で費用がかからない手続きを模索している.この意味では,まさに,医療界全体として安全性の向上と,医療機関および医師のアカウンタビリティ追及という2つの大きな政策目標の双方について微妙なバランスを保つような制度設計の努力がなされてきたといえる.
結論
医療事故情報の取り扱いにおいて,最大の焦点は,安全学習システムと説明責任システムをいかに調和させつつ,両者の目標を実現していくかである.本研究における3年間の海外の制度の調査から明らかになったことは,もちろん完全とはいいがたいが各国がそのような困難な課題に真摯に取り組んでいる姿である.重要なのは,医療者による安全に対する真摯な努力とそれをサポートする制度的枠組みである.さらに,紛争を激化させないためには,医療者側により早期の状況説明,必要な場合には真摯な謝罪が重要といえる.医療者にとっては,謝罪することは法的責任を認めることに直接的に繋がってしまうという懸念があることも事実であるが,諸外国における実態をみれば,患者側はむしろ訴訟を真実発見の場として位置づけている場合が多く,むしろ,真実の説明がなされないからこそ訴訟を利用しているという構図が浮かび上がっている.

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200400959B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全推進に関する法的問題に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学・法学部・国際関係法学科)
研究分担者(所属機関)
  • 児玉安司(三宅坂総合法律事務所)
  • 加藤久雄(慶応大学法学部)
  • 寺野彰(獨協医科大学)
  • 神作裕之(東京大学法学部)
  • 山口斉昭(日本大学商学部)
  • 佐藤雄一郎(横浜市立大学医学部)
  • 藤澤由和(新潟医療福祉大学)
  • 長谷川友紀(東邦大学公衆衛生学)
  • 飯田修平((社)全日本病院協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,日本における医療安全の推進のためには,特に,①医療機関内部の医療事故情報収集システム,②医療事故情報を医療機関・国・関連業界で迅速かつ適正に共有し分析把握するシステム,③患者の苦情から医事紛争に至る全過程における適正な苦情対応システム,などの構築が緊要であると捉え,そして,それらの不可欠な制度構築のために,本邦の現行法制度を十分に検討し,かつ,諸外国の関連法制を調査した上で,本邦のシステムの基盤となる望ましい法制度のあり方を考究することとした.
研究方法
上記目的のため,第1に『英米豪独仏などにおける医療事故情報に係る法制度』,第2に『英米豪独仏などにおける患者の苦情対応・紛争処理に係る法制度』,第3『本邦における医療事故・医事紛争に関連する患者の意識についての調査研究』を行った.
結果と考察
医療事故情報の取扱いに関しては,現在各国とも様々な政策や取り組みに着手してはいるが,それらはまだ緒についたばかりである.ただいくつかの特徴も明らかになった.英国や豪州では,医療安全について,ミスの報告制度によって原因を分析し,そこから学ぼうとする姿勢を強調し,医療現場で安全に対する意識改革を目指してきた.そのために,従来敵対的に捉えがちであった患者をも巻き込んだ形で医療の安全を向上させる努力をしてきた.同時に,仏,豪,英など多くの諸国では迅速な被害者救済のため,裁判外での解決が促進されており,簡単で費用がかからない手続きを模索している.この意味では,まさに,医療界全体として安全性の向上と,医療機関および医師のアカウンタビリティ追及という2つの大きな政策目標の双方について微妙なバランスを保つような制度設計の努力がなされてきたといえる.
結論
医療事故情報の取り扱いにおいて,最大の焦点は,安全学習システムと説明責任システムをいかに調和させつつ,両者の目標を実現していくかである.本研究における3年間の海外の制度の調査から明らかになったことは,もちろん完全とはいいがたいが各国がそのような困難な課題に真摯に取り組んでいる姿である.重要なのは,医療者による安全に対する真摯な努力とそれをサポートする制度的枠組みである.さらに,紛争を激化させないためには,医療者側により早期の状況説明,必要な場合には真摯な謝罪が重要といえる.医療者にとっては,謝罪することは法的責任を認めることに直接的に繋がってしまうという懸念があることも事実であるが,諸外国における実態をみれば,患者側はむしろ訴訟を真実発見の場として位置づけている場合が多く,むしろ,真実の説明がなされないからこそ訴訟を利用しているという構図が浮かび上がっている.

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-