救急救命士による特定行為の再検討に関する研究

文献情報

文献番号
200400955A
報告書区分
総括
研究課題名
救急救命士による特定行為の再検討に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
平澤 博之(千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では平成14年度より救急救命士による「気管挿管による気道確保」「薬剤投与」についてそれぞれの有効性・安全性を検討してきた.本年度(平成16年度)においては,平成18年度の導入に向け,救急救命士がエピネフリン1剤に限った薬剤投与を行う為の体制を作成することを目的とした.
研究方法
18名の研究班員で下記の事項につき調査した.
1)院外心肺停止事例における救急救命士によるエピネフリン1剤の投与プロトコールの作成
2)心肺停止事例におけるエピネフリン気管投与の有効性・安全性の検討
3)救急救命士における薬剤投与の病院実習ガイドラインの作成
4)諸外国における病院前救護体制の事情
結果と考察
1)救急救命士が使用可能な薬剤はエピネフリン1剤とし投与法は静脈内投与のみとした.一連のアルゴリズムを作成し,その都度医師の具体的指示を受けることとした.
2)文献検討の結果,エピネフリンの気管投与法については臨床においてはエビデンスは存在しなかった.救急救命士がエピネフリン気管投与を行うとした場合,安全対策を考慮したプロトコール化は困難であると考えられた.
3)病院実習の受講資格者は実習受け入れ施設長が許可した既取得者又は養成課程者とした.実習責任者の指導下に実習内容を「A.点滴ラインの準備と末梢静脈路の確保」と「B.エピネフリンの投与とその後の観察」の2段階のパートに分類した.修了基準として,A,B各パート共に10症例を経験した者を原則とした.
4)米国ではパラメディックにより数十種類の薬剤が使用可能である.しかしこの体制を維持するためには,十分な病院実習や生涯教育トレーニングの体制が確立されていた.欧州諸国では多くの救急現場において医師がより多くのプレホスピタルケアの部分を担っていた.
結論
院外心肺停止における救急救命士による薬剤投与実施に向けての体制づくりについて検討した.まず,薬剤投与プロトコールに関しては,エピネフリン1剤の静脈内投与について実際の救急現場での投与を想定しプロトコールの作成が可能であった.安全性に問題があることからプロトコールには気管投与を含めなかった.病院実習についてはガイドラインを作成することが可能であった.一方,諸外国における病院前救護体制については,高度な救命処置行為を実施している国・地域ほど,MC体制が充実していることが判明した.わが国においても救急救命士による特定行為の内容拡大にあたっては,このMC体制をさらに充実化させる必要があるとの結論に至った.

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200400955B
報告書区分
総合
研究課題名
救急救命士による特定行為の再検討に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
平澤 博之(千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年,救急救命士による特定行為の内容が見直されてきた.本研究では,院外心肺停止事例における救急現場での「気管挿管」「薬剤投与」の有効性・安全性などを充分検討した上で,これらが救急救命士による新たな特定行為として導入した場合,救急救命士に必要な追加講習や研修体制を確立し,さらに実際の救急現場でこれらの新たな特定行為が安全に実施される為のプロトコールを作成することを目的とした.
研究方法
平成14~16年の3年計画で,院外救急に関係する諸専門家を研究協力者として招き,研究班を結成し,複数回の打合せ会議を開催し救急救命士の新たな特定行為としての「気管挿管」と「薬剤投与」について協議した.気管挿管に関しては既に有効性・安全性については「平成13年度厚生科学研究 救急救命士の適切な気道確保に関する研究」にて充分検討されていた為,今回の研究では気管挿管実施に必要な教育・研修体制および実際の救急現場でのプロトコールについて検討した.薬剤投与については本研究班発足当時,院外心肺停止事例に対する有効性・安全性に関するエビデンスが存在しなかった為,まず多施設比較対照研究としてドクターカーによる薬剤投与の有効性を検証した.次いで薬剤投与に関する教育研修体制および実際の救急現場での薬剤投与プロトコール等を作成した.
結果と考察
気管挿管に必要な追加講習は62時限で,その後に全身麻酔症例を対象とした麻酔科医指導下の気管挿管実習を30症例行うことが必要であると考えられた.また実際に救急救命士が気管挿管を実施する場合にはオンラインメディカルコントロール下に適切かつ安全に実施されなければならないと考えられた.一方,薬剤投与に関しては多施設研究の結果,院外心肺停止におけるエピネフリン単独使用の場合,エピネフリン・リドカイン・アトロピンの3剤使用の場合の何れにおいても非使用群に比較し有効であった.しかしながら救急救命士が実際に薬剤投与を実施する場合の安全性を検討した結果,新たな特定行為としての薬剤投与はエピネフリン単独使用が適切であると考えられた.このエピネフリン1剤使用の実施に必要な追加講習は262時限であり,この中には病院での薬剤投与を含めた実習が必要であるとの結論に至った.
結論
救急救命士の新たな特定行為として「気管挿管」「薬剤投与」について,その有効性・安全性,さらに教育研修,実際のプロトコール等,必要な諸体制の確立につき医学的に検討した.これらの新たな特定行為が実施されるにおいては,今回の研究成果を踏まえると同時に,メディカルコントロール体制の確立が必須であると考えられた.

公開日・更新日

公開日
2005-10-28
更新日
-