薬剤排出トランスポーターの基質輸送メカニズムに関する研究

文献情報

文献番号
200400941A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤排出トランスポーターの基質輸送メカニズムに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
真菌症治療薬の開発を目標として、病原真菌(Candida glabrataを中心として)の多剤耐性に関わるATP binding cassette(ABC)タンパク質の生化学的、酵素化学的性質を明らかにする。
研究方法
出芽酵母の主要なABCタンパク質遺伝子を破壊した株(AD1-8u-)に、さらにSec6-4遺伝子変異を導入し、制限温度において分泌小胞を細胞内に蓄積するような変異株(AD1-8u-sec6-4)を作製する。この細胞株に病原真菌のABCタンパク質を発現させて、分泌小胞を調製する。調製された小胞を用いた薬剤排出アッセイ系を確立する。
 病原真菌Candida glabrataのABCタンパク質、Cdr1pとPdh1pおよびそれらのリン酸化部位の変異タンパク質をAD1-8u-株において発現させて、リン酸化と薬剤排出活性との相関を調べる。
結果と考察
AD1-8u-にSec6-4遺伝子変異を導入し、制限温度で分泌小胞を蓄積するような株(AD1-8u-sec6-4 )を構築した。この酵母株がどのような温度において分泌小胞を蓄積するのかを透過型電子顕微鏡観察により検討した。細胞の形態と生育速度を考慮した結果、34℃を至適温度と判断した。現在、分泌小胞の調製方法を検討している。
Cdr1pとPdh1pを出芽酵母において大量発現させて、タンパク質のリン酸化状態と薬剤排出機能の相関を調べた。抗リン酸化セリン・スレオニン抗体を用いたウエスタンブロット解析により、両者はそれぞれ異なるPKAの触媒サブユニットによってリン酸化されること、またそのリン酸化量がストレスや栄養条件によって変動することを明らかにした。さらに、Cdr1pの予測されるリン酸化部位を変異させたタンパク質を用いて解析を行った。その結果、307番目のセリンと、484番目のセリンをアラニンに置換させると、リン酸化量とATP加水分解活性が低下し、薬剤耐性能も低下することを明らかにした。これらのリン酸化部位は近傍にあるヌクレオチド結合ドメインの活性を調節し、タンパク質全体の薬剤輸送活性を調節するものと考えられる。
結論
ABCタンパク質を高発現し、分泌小胞を蓄積するような酵母株を作製した。 Candida glabrataのABCタンパク質は培養条件に応じたリン酸化を受けて、活性が調節されると言うモデルを提唱した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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