蚊媒介性ウイルスのベクター要求性の解明と創薬探索に関する研究

文献情報

文献番号
200400936A
報告書区分
総括
研究課題名
蚊媒介性ウイルスのベクター要求性の解明と創薬探索に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
新井 智(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
蚊によって媒介されるウイルスのベクターステージの生物学的意義およびウイルスライフサイクルにおけるベクターの重要性とウイルス生存への影響を解析する。本年は、自然感染の現状把握と多様な疫学情報を収集し、日本における日本脳炎ウイルスの自然感染状況の把握し、現在の日本の感染状況を明らかにしつつ現在も感染リスクが存在するか検討する。また、蚊の中で増殖しにくいウイルスの全塩基配列を決定し、ベクターである蚊の中でのウイルス増殖メカニズムに影響を与えるファクターのうち、ウイルス側のファクターの検索を進めた。
研究方法
NS1に対する抗体保有状況の把握により、自然感染率を推定した。また、家畜で使用されている日本脳炎ウイルス生ワクチン株とその親株との全塩基配列の比較し、両者の配列の違いからウイルスの病原性および昆虫ステージにおけるウイルス増殖性へ影響を与えるウイルス構造の検索を行った。
結果と考察
2001年に採血された日本人のNS1に対する抗体保有率は、全体で約4%であった。NS1に対する抗体持続は数年と推定されているため、年間約数%のヒトが日本脳炎ウイルスに新たに感染していると推測された。
日本で使用されている家畜の弱毒生ワクチン株の全塩基配列を決定し、親株と比較することで病原性およびベクター親和性に影響を与える部位の検索を行った。各ウイルス株の配列は、10977bp、推定されたアミノ酸配列は3432aaであった。それぞれのワクチン株は、ワクチンとして弱毒化されているものの、親株とアミノ酸レベルの変異はわずかであった。ワクチン株すべてに共通し、しかも親株と異なるアミノ酸はわずかに1アミノ酸であった。これらの結果から、この1アミノ酸の変異は弱毒生ワクチン株に共通・必須変異である可能性が示唆された。今後、組み換えウイルスを作出し他の変異部位も含めて検証する予定である。
結論
年間約数%のヒトが新たに日本脳炎ウイルスに感染していると推定された。日本で使用されている家畜用の生ワクチン株とそれらの親株のアミノ酸配列の比較によって、生ワクチン株に共通のアミノ酸変異はわずかに1カ所のみで、1アミノ酸の変異が病原性やベクター内での増殖に影響を与えている可能性が示唆された。今後、本変異の日本脳炎ウイルス弱毒への影響を組み換えウイルスを用いて解析する予定である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-