臓器移植患者の小腸及び肝組織を用いた遺伝子機能解析に基づくテーラーメイド免疫抑制療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200400918A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植患者の小腸及び肝組織を用いた遺伝子機能解析に基づくテーラーメイド免疫抑制療法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
乾 賢一(京都大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中紘一(京都大学医学部附属病院)
  • 田上昭人(国立成育医療センター研究所)
  • 加賀山 彰(藤沢薬品工業株式会社 創薬推進研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝移植後の術後管理には、カルシニューリン阻害薬タクロリムスやシクロスポリンを中心に小用量のステロイド薬の併用を基本としているが、有用な分子生物学的マーカーの不足から投薬量の設定は困難であった。本研究では、生体肝移植術時に切除される小腸組織と移植肝生検組織の一部を用いて、P-糖タンパク質やCYP3A遺伝子群の発現レベルの数値定量化と遺伝子多型情報などを利用し、患者一人ひとりの術後経過に従ったタクロリムスの投与設計法の確立を目的とする。
研究方法
使用するヒト組織検体は、生体肝移植術中に切除される小腸組織の一部と、病理検査用に採取される移植肝生検組織の一部とした。RNA、ゲノムDNA の抽出を行い、小腸及び肝臓におけるMDR1、CYP3A4、5、7、43のmRNA発現レベルを測定した。本研究計画は、京都大学医学研究科・医学部医の倫理委員会の審査を受け、研究科長より承認を得ている。なお、患者個々のインフォームド・コンセントについては、肝臓移植前における説明と同時に担当医から十分な説明(約1時間程度)を行い、後日同意書(同意または拒否・撤回)をコーディネーターに提出するというシステムで実施している。
結果と考察
約40例の成人肝移植例を対象に、術後の血中濃度モニタリング用血液検体の余剰分を用いて、タクロリムス及びシクロスポリンの薬効評価を行った。その結果、シクロスポリンについては、既報と同様に血中濃度に応じたカルシニューリン活性の変動が観察されたが、タクロリムスについては対応しないことがわかった。本年度では61例(4例はシクロスポリン症例)について、術後のタクロリムス初期用量予測を行い、本解析による初期用量の予測が可能であることが確認できた。また、CYP3A5遺伝子多型による術後の用量漸増の程度についても解析し、野生型ホモの遺伝子型を有する肝臓を移植された患者では、積極的な用量の変更を要することが示唆された。
肝臓、小腸、腎臓など薬物動態に影響を及ぼす臓器のみに限定したmdr1遺伝子欠損マウスを作成するに当たり、臓器特異的なプロモーター配列の探索とin vitro評価を進め、指標遺伝子を導入したコンストラクト作成を行った。
結論
タクロリムスはカルシニューリン阻害のみでは説明できない別の経路による免疫抑制活性を有していること、肝移植患者に対する初期用量は小腸MDR1発現量を参考に設定可能であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2005-05-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-