霊長類ES細胞の無フィーダー、無血清培養を用いた新しい未分化維持増殖培養法と血液細胞分化制御系の開発

文献情報

文献番号
200400917A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類ES細胞の無フィーダー、無血清培養を用いた新しい未分化維持増殖培養法と血液細胞分化制御系の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
湯尾 明(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 靖(田辺製薬株式会社先端医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
霊長類胚性幹細胞(ES細胞)はその無限増殖能と多能性分化能とから再生医療における有望な材料と期待されている。しかし、再生医療への応用のためには、異種動物細胞(マウス由来フィーダー細胞)の混入を回避する必要がある。即ち、霊長類ES細胞の研究に際しては「霊長類フィーダー細胞」を用いるか「無フィーダー培養」を確立することが重要である。本研究では、カニクイザルES細胞を用いて、この様な課題に望んだ。
研究方法
未分化維持培養を霊長類フィーダー細胞で行う研究においては、さまざまの初代培養ヒト細胞を用いた。中胚葉系への分化においては、6種類のサイトカインとOP9細胞の培養上清などを用いた。細胞表面抗原の同定は、FACSもしくは免疫染色を行い、白血球機能はNBT還元能を測定した。
結果と考察
未分化維持培養を霊長類のフィーダー細胞で行う研究においては、いずれのヒト由来フィーダー細胞(ヒト新生児表皮線維芽細胞など)においてもマウスのフィーダー細胞と同等か、もしくはそれ以上の結果が得られた。分化培養実験においては、未分化ES細胞をOP9培養上清中でサイトカイン存在下に培養すると、培養開始後数日で「指」のような形状を有する細胞へと分化した。この指様の細胞を、さらに1、2週間培養すると球状の細胞へと変化し、CD45、CD34陽性(60-80%)の未分化血液細胞であった。この細胞を、MS5の培養上清でさらに培養すると、CD14陽性、NBT還元能陽性の単球・マクロファージ系細胞への分化が誘導された。指様の細胞は、ある種の条件では敷石上の細胞に変化し、CD34、CD45陰性、VEカドヘリン、PECAM-1陽性、cord formation陽性で、血管内皮細胞と考えられた。以上より、指様の細胞は血液細胞と血管内皮細胞の両方に分化する中胚葉系の細胞(hemangioblasts)と考えられた。
結論
ヒト由来の数種の株化細胞が、マウス胎仔由来のフィーダー細胞と同等以上のフィーダー能を有することが明らかとなった。分化培養においては、フィーダー細胞、胚様体、ソーティングを用いない単層の血液細胞血管内皮細胞分化培養法を開発した。しかも、得られる血液細胞も血管内皮細胞も極めて高純度で、増殖能も高く、効率の高い手法である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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