新しい修飾技術を用いた再生医療用生物由来素材の開発

文献情報

文献番号
200400916A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい修飾技術を用いた再生医療用生物由来素材の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岸田 晶夫(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 高野久輝(国立循環器病センター研究所)
  • 藤里俊哉(国立循環器病センター研究所再生医療部)
  • 白数昭雄(ニプロ株式会社総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 絶対的なドナー不足である脳死臓器移植、再生医療あるいは既存の人工臓器・医用材料の欠点を克服するため、新しい生体材料の必要性が高まっている。本研究では生物由来組織の高機能化を実現するための、新しい加工法について検討を行う。これにより、複雑な構造でも造形する必要がなく、あるいは生体と同等の力学特性を有する再生医療用素材を、高機能化することが期待できる。
研究方法
基盤生体組織スキャフォールド作成として、我々が新規に開発した超高静水圧印加及び低温マイクロ波照射法による細胞除去技術を種々の組織に適用し、その処理条件の最適化を試みた。対象とした組織は、心筋、心臓弁、血管、気管、軟骨、骨、などの組織と、肺、肝、腎などの臓器である。また、生物由来素材を用いたスキャフォールドとして、分解性と力学特性を有するコラーゲン架橋したマトリクスを作製した。内径1-2mmの小口径人工血管を想定したチューブを作成し、吻合適正を検討した。
 上記のスキャフォールドへの機能性分子の複合化の基礎研究として、抗血栓性の合成高分子であるポリメチルメタクリロイルホスファチジルコリン(MPCポリマー)のコラーゲン組織との複合化について検討した。
結果と考察
 スキャフォールド作製では、まず心臓弁と血管および気管について条件を設定した。超高圧(10,000気圧)処理は10分で十分であった。その後の洗浄時間は、用いる洗浄液によって条件が異なり、最も脱細胞の効果が高い条件は37℃で3週間であった。肺、腎と軟骨、骨は同条件で脱細胞が可能であった。一方、肝と心筋では、細胞破壊についての超高圧処理は同条件で達成できたが、洗浄法に関しては最適条件設定に至っていない。これはこれらの組織の結合組織の割合が少ないためと考えている。
 コラーゲン製人工血管では、吻合部の補強法についての問題点を抽出した。現在、改良法を検討中である。
 機能分子複合化については、市販のコラーゲン溶液を用い、生体適合性に優れる反応剤を用いて両者を結合すると、弾性のあるゲル状物質が得られた。この新しいゲルは、コラーゲンの細胞接着性、分解性とMPCポリマーのタンパク質吸着抑制効果の両者を併せ持っており、生体内移植後に血液接触面ではMPCポリマーの抗血栓性を、バルク中ではコラーゲンの組織再生特性を発揮するように、脱細胞化組織や架橋コラーゲン組織とさらなる複合化を行う予定である。
結論
生物由来材料を種々の方法で加工することにより、新しい再生医療用スキャフォールド開発の可能性が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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